(英語版)
(アラビア語版)
2023年1月
Part III キメラ(Chimera)
64.隕石に乗って地球にやってきたウィルス(2)
ギャラクシーは宿主となる生命体を求めて氷河時代の地球をさまよった。そしていくつかの生命体で先住者との闘いに勝ち、あるいは生命体の部位毎に先住者と住み分ける共存体制によりギャラクシーは安住の地を見出した。その後も宿主の体内に次々と侵入する別のウィルスとも戦いあるいは共生していった。そしてギャラクシーは細胞分裂により遺伝子情報を次の世代へと引き継ぎ自らの増殖と再生を図った。新しく誕生したウィルスは宿主の群れの中で別の宿主に移り住み、やがては宿主の全個体に安住の地を得たのであった。
ギャラクシーの生存を脅かしたのは先住者あるいは新しい闖入者だけではなかった。それは宿主そのものの死である。宿主の生命が失われた時、その体内に寄生するギャラクシーそのものの生命も終わる。宿主あってこその寄生体なのである。ギャラクシーはその宿命を逃れるができない。
宿主の置かれた外部環境も決して安泰ではない。弱肉強食の自然の掟は厳しい。弱いものは危険を逃れるため種々の特殊な才能を身につけた。鳥類は翼を得て地上の敵から逃れ、亀甲類は外敵が襲い掛かってきたとき、甲殻の中に身を潜め、敵が諦めて立ち去るのを待った。そしてあるものは速い脚力で敵の魔手を逃れた。こうして弱きものたちは生き永らえ子孫を残してきた。
ギャラクシーはいくつもの試行錯誤を経て宿主を探し続け、今ではアラビアンオリックスの生殖器官に安住の地を得ている。そこに行き着いたのは他のウィルスとの生存競争、あるいは種の繁栄と絶滅というサイクルを乗り越えていくつかの宿主を渡り歩いた結果であった。もちろん創造主はそのことをすべてお見通しだった。
アラビアンオリックスは地球上の生物の中では弱者の部類に入り、外敵に狙われやすい。しかし通常の生物の生存をはねつける砂漠と言う過酷な自然環境の中でオリックスは食物を見つけ、また速い逃げ足で外敵から逃れることで今まで生き延びてきたのであった。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html