石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2009年版解説シリーズ:石油篇(4)

2009-06-22 | その他

*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(4):世界の石油精製能力

(1)2008年の地域別精製能力

 2008年の世界の石油精製能力は8,863万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると最も大きいのはアジア・大洋州の2,510万B/Dで全世界に占める割合は28%である。欧州・ユーラシアもほぼ同規模の2,509万B/D(28%)であり、北米2,104万B/D(24%)がこれに続いている。石油消費量ではアジア・大洋州、北米、欧州・ユーラシアの順であるが(前章「世界の石油消費量」参照)、精製能力では欧州・ユーラシアと北米の順位が入れ替わっている。このことから欧州・ユーラシアは精製能力過剰の状態にあり、北米は反対に精製能力不足の状態にあることが推定される(グラフ「地域別石油精製能力(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-91aRefinaryCapacityby.gif 参照)。

  国別では米国の精製能力は1,762万B/D、世界全体の20%を占め、2位の中国(773万B/D、8.7%)以下を大きく引き離している。以下は3位ロシア(555万B/D)、4位日本(465万B/D)、5位インド(299万B/D)、6位韓国(271万B/D)と続き、世界上位10カ国にはこのほかイタリア、ドイツ、サウジアラビア及びフランスが入っている(表「国別石油精製能力上位20カ国」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-4-91RefineryCapacitybyCountries.htm 参照)。

(2)1965~2008年の地域別精製能力の推移

 上図は1965年から2008年までの地域別の精製能力の推移である(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-91bRefineryCapacity65.gif参照)。欧州・ヨーロッパ及び北米の先進工業地域は1965年以降第二次オイルショック(1979年)前後までは精製能力が大きく増えている。この時代は欧米先進国の経済が拡大し石油需要が急伸したため、各国は将来を見越して製油所の新増設を盛んに行った。しかしオイルショックを経て1980年代に入ると石油の需要が急減したため、先進地域は過剰な精製能力を削減せざるを得なかった。特に欧州・ヨーロッパでは1979年に32百万B/Dあった精製能力が1990年代後半には25百万B/Dにまで削減されその後現在まで横這い状態を続けている。

  これに対してアジア・大洋州地域では日本で欧米同様の精製能力の削減が行われたものの、全体としては中国、インド、東南アジアなどの需要が拡大し、石油精製設備の新増設が活発に行われた。この結果オイルショックの前後を通じてアジア・大洋州の精製能力は一貫して拡大しており、1965年にわずか360万B/Dであった精製能力は2008年には7倍の2,510万B/Dに達している。この間1997年には北米地域を追い抜き、また2008年にはわずかではあるが欧州・ユーラシア地域の能力を上回った。アジア・大洋州は今や世界最大の精製能力を有する地域となっている。

  精製能力を米国、日本、中国及びインド4カ国で見ると(グラフ「米・日・中・印の精製能力の推移(1965-2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-91cRefineryCapacityby.gif参照)、1965年の米国の精製能力は1,039万B/Dで、日本は5分の1の192万B/Dであった。これに対し中国及びインドの精製能力はともにわずか20万B/D強に過ぎなかった。米国はその後急速に精製能力を増強し1980年には1,862万B/Dに達した。日本もほぼ同じ時期に564万B/Dのピークに達している。これに対し中国、インドも設備増強を図ったがその足取りは鈍かった。

  ところがオイルショック後の1980年代に入ると、米国は余剰設備を次々と廃棄して15百万B/D台にまで精製能力を落とし、日本も4百万B/D台に減らしている。これに対し中国とインドは1990年代後半から急速に設備の新増設を行い、特に中国の伸びは目覚しく1999年には遂に設備能力で日本を追い抜いた。

  1990年代後半から2008年までのこれら4カ国の設備能力は、日本一国のみが1995年の501万B/Dから2008年には465万B/Dへと削減しているのに対し、米国は1,533万B/Dから1,762万B/Dへと約15%増強、中国は401万B/Dから773万B/Dとほぼ倍増、インドも113万B/Dから299万B/D(2.6倍)とそれぞれ大幅な設備増強を行っている。

(3)米国、日本及び中国の精製設備稼働率(1980~2008年)

 精製能力に対して実際に処理された原油の量(通油量:Refinery throughputs)で割ったものが設備の稼働率である。2008年の全世界平均の稼働率は85%であり、中国は89%と平均より高く、日本は世界平均と同じ85%、米国は少し低い83%であった。各国で多少のばらつきはあるものの8割台のかなり高い稼働率である。

  このように3カ国が同じような高い稼働率であることは実は過去数十年間では見られなかった現象である。ちなみに1980年以降の稼働率の推移を見ると(グラフ「石油精製設備の稼働率(1980-2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-92RefineryCapacityOpe.gif参照)、1980年の米日中3カ国の稼働率は米国72%、日本71%に対し中国は世界平均(75%)を上回っていた。3カ国の稼働率はその後2年間さらに下がるが、中国と日本の落ち込みが激しく1982年には日本は60%、中国も72%にまで低下した。これはオイルショック前に将来の石油需要の増加を見越して製油所を新増設したものの需要が急減したためである。その後80年代後半以降石油需要が回復したため世界の平均稼働率は80%台に上昇し米国、中国も稼働率が80%台に回復した。しかし日本だけは過剰な設備を抱えたまま稼働率は60%台にとどまった。

  90年代は3カ国で明暗がわかれ、米国は90%以上、日本も80%台半ばを維持したのに対し、中国は精製能力を急拡大したため(上記(2)参照)、稼働率が70%以下に低下した。そして2000年以降は経済が世界的規模で拡大し、中国の石油精製設備の稼働率も急速に改善されている。2005年の世界の平均稼働率は86%、米国、日本及び中国はそれぞれ88%、91%、90%と非常に高い水準に達している。

   2005年以降は米国と中国の立場が逆転し、中国が高い稼働率を維持している。米国の稼働率も年々低下しているとは言え80%台後半の高い水準にある。石油価格上昇の一因として精製設備(特に米国の)の不足が指摘されており、世界的規模で精製設備の新増設が必要な状況にあると言えよう。

(石油篇第4回完)

(これまでの内容)

石油篇(3):世界の石油消費量

石油篇(2):世界の石油生産量

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

以上本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(6/14-6/20)

2009-06-20 | 今週のエネルギー関連新聞発表
6/16 東燃ゼネラル石油      代表取締役の異動に関するお知らせ http://www.tonengeneral.co.jp/apps/tonengeneral/pdf/2009-6-16_1.pdf
6/16 三井物産他      ブラジル・ペトロブラス社プレソルト層鉱区開発向け大水深鉱区掘削船事業に参画 http://www.mitsui.co.jp/release/2009/1189666_3576.html
6/18 石油連盟      天坊 石油連盟会長定例記者会見配布資料(2009年6月18日) http://www.paj.gr.jp/from_chairman/precon/2009/20090618.html
6/18 SaudiAramco/Total      Saudi Aramco and Total award EPC contracts for Jubail Export Refinery http://www.total.com/en/press/press_releases/pr-2009/090616-saudi-arabia-aramco-jubail_17987.htm
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月19日)

2009-06-20 | 今日のニュース

・サウジアラムコと仏Totalが40万B/D合弁製油所建設をTechnipに発注

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

著書のご案内

2009-06-17 | その他

「アラブの大富豪」(新潮新書)

発行所:新潮社

定価:  680円(税別)

詳しくは新潮社ホームページでどうぞ。

「ビジネスチャンスは中東にあり!~オイルマネーからイスラム金融まで~」

発行所:PHP研究所

定価:1,365円(税込み)

詳しくはPHP研究所ホームページでどうぞ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2009年版解説シリーズ:石油篇(3)

2009-06-17 | その他

*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(3):世界の石油消費量

(1) 地域別消費量

 2008年の世界の年間石油消費量は日量8,446万バレル(以下B/D)であった。前年と比べるとマイナス0.6%の減少であるが、このように石油の消費量が前年を下回るのは1993年以来15年ぶりのことである。

  消費量を地域別でみるとアジア大洋州が2,534万B/Dと最も多く全体の30%を占め、次に多いのが北米の2,375万B/D(28%)であった。一昨年までは北米の消費量が最も多かったが、昨年以降アジア大洋州が北米を上回っている。これら二地域に続くのが欧州・ユーラシア2,016万B/D(24%)であり、これら3地域で世界の石油の82%を消費している。残りの中東(8%)、中南米(7%)及びアフリカ(3%)の3地域を合計しても18%に過ぎず、石油の消費は先進地域(北米、欧州・ユーラシア)及び新興工業国が多いアジア・大洋州に偏っている(グラフ「地域別石油消費量2008年」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D%20Energy.html  参照)。

  各地域の消費量と生産量(前回参照)を比較すると、生産量では世界の31%を占めている中東が消費量ではわずか8%であり、アフリカも生産量シェア13%に対して消費量シェアは3%に過ぎない。これに対してアジア大洋州は生産量シェア10%に対して消費量シェアは30%、また北米はそれぞれ16%、28%と大幅な需要超過となっている。欧州・ユーラシアは生産量シェア22%、消費量シェア24%でほぼ均衡している。このことからマクロ的に見て、世界の石油は中東及びアフリカ地域からアジア・大洋州及び北米地域に流れていると言えよう。

 (2) 国別消費量

 国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2008年の消費量は1,942万B/D、世界全体の23%を占めている。前年に比べ-6.1%と大幅に落ち込んだが、それでも米国一国だけで実に世界全体の2割強を占めており、第二位以下を大きく引き離す石油消費大国である。米国に次ぐのは中国(800万B/D、シェア10%)であり、以下日本(485万B/D、同6%)、インド(288万B/D)、ロシア(280万B/D)、ドイツ(251万B/D)、ブラジル(240万B/D)と続いている。これら上位7ヶ国の石油消費量が世界全体に占める割合は51%に達する。石油は米、日、独の先進3カ国とBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア及びブラジルの新興4カ国の合計7カ国で世界の半分を消費している(表「国別石油消費量ベスト20(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-96OilConsumpbyCountries.htm 参照)。

(3) 石油消費の地域別構成の推移

(上図参照。拡大図は「地域別石油消費量の推移(1965~2008年)」 http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D%20Energy.html

 図を一見して分かるとおり、1965年には北米と欧州・ユーラシアの2地域が世界の石油消費の大半を占めており、その他の地域の消費量は50万B/D以下に過ぎなかった。しかしその後、アジア・大洋州の消費の伸びが著しく、90年代後半には欧州・ユーラシア地域を追い抜き、さらに2008年時点では北米をも上回り世界最大の石油消費地域となっている。

  欧州・ユーラシア地域を見ると、1965年に約1,200万B/Dであった消費量が急激に増加し、オイルショック直後の1980年には2,400万B/Dに倍増している。しかしその後消費量は減少傾向をたどり1990年代の後半以降は2,000万B/D前後の横ばい状態を続けている。北米地域については1980年代前半に需要が一時落ち込んだが、80年代後半以降は再び一貫して増加を続け2005年には2,500万B/Dに達した。しかし上記(2)に述べたとおり2008年には米国の消費量が前年比6.4%落ち込んでおり、増加傾向に歯止めがかかった形である。

  その他の中東、中南米、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、消費量は着実に増加している。特に中東地域は1965年の96万B/Dが2008年には642万B/Dに増加している。中東にはサウジアラビアを始め石油輸出国が多いが、各国の国内石油消費の伸びが生産のそれを上回れば、その分輸出余力が減少することになる。

  このようにアジア大洋州地域の石油消費が伸びる一方、中東など産油国の輸出余力が減少している事実は、将来の石油需給問題に影を投げかけていると言えよう。

(4) アジアの三大石油消費国(日、中、印)の消費量の推移

 上記に述べたとおりアジア大洋州の石油消費量は過去半世紀近く大幅に増加し続けている。1965年に320万B/Dであった同地域の消費量は5年後の1970年には倍以上の653万B/Dに達し、更に10年後の1980年には1千万B/Dを突破した。そして2000年には2,100万B/Dを超え、2008年は2,534万B/Dとなり、40年間で消費量は8倍に増えている。

  このような増加をもたらした主な要因は中国とインドの二カ国にある。1965年の中国(香港を含む)とインドの石油消費量はそれぞれ26万B/D、25万B/Dであり、アジア大洋州の全消費量に占める割合も2カ国合わせて16%に過ぎなかった。しかし1990年以降は特に中国の消費量が急激に増加し、2002年には遂に日本も追い抜き、2008年の中国の石油消費量は829万B/D、地域全体の3分の1を占めるに至っている。インドも2008年の消費量は288万B/Dであり、1965年当時の10倍以上に膨れている。

  これに対して日本は1965年は地域の全消費量の半分以上(164万B/D、51%)を占め、量的にも1980年には3倍弱の474万B/Dまで増加したが、その後1995年以降は逓減しており2008年の消費量は485万B/D、地域全体に占める割合も20%弱にとどまっている。日本が省エネ技術により安定成長を続けたのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げた結果であると言えよう。

(グラフ2-D-2-96c Oil Consumption in Japan China & India, 1965-2008「日本、中国、インドの石油消費量の推移」 http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D%20Energy.html  参照)

(石油篇第3回完)

(これまでの内容)

石油篇(2):世界の石油生産量石油篇

(1):世界の石油の埋蔵量

以上本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行

〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月17日)

2009-06-17 | 今日のニュース

・ドル安で原油価格72ドルに近づく

・クウェイト、今月からカタールLNGの輸入開始

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計レポート2009年版解説シリーズ:石油篇(2)

2009-06-16 | その他

*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(2):世界の石油生産量

(1) 地域別・国別生産量

 2008年の世界の年間石油生産量は日量8,182万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると中東が2,620万B/Dと最も多く全体の31%を占めている。その他の地域については欧州・ユーラシア1,759万B/D(22%)、北米1,313万B/D(16%)、アフリカ1,029万B/D(13%)、アジア・大洋州793万B/D(10%)、中南米669万B/D(8%)である。(グラフ「地域別石油生産量2008年」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-95bOilProductionbyReg.gif参照)

  各地域の生産量と埋蔵量(前回参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の60%を占めているが生産量ではその半分の31%に過ぎない。その他の地域は埋蔵量では世界シェア11%の欧州・ユーラシアが生産量では22%を占めており、同様にアジア・大洋州も埋蔵量のシェアよりも生産量のシェアが大きい。特に北米は埋蔵量シェアが世界全体の6%にとどまるのに対して、生産量のシェアは16%と10ポイントも上回っている。このことから地域別に見て将来の石油生産を維持又は拡大できるポテンシャルを持っているのは中東、アフリカおよび中南米であることが読み取れる。

  次に国別に見ると、最大の石油生産国はサウジアラビアであり、同国の2008年の生産量は1,085万B/Dであった。第2位はロシア(989万B/D)であり、両国で全世界の4分の1(26%)の石油を生産しているのである。この後には米国(674万B/D)、イラン(433万B/D)、中国(380万B/D)が続いている。6位以下10位までの生産国はカナダ、メキシコ、UAE、クウェイト、ベネズエラの各国である。生産量3位の米国と5位の中国は次回に触れるように世界1位及び2位の石油消費国であるため、国内生産量だけでは不足し大量の石油を輸入している。ベスト・テンのその他の国はいずれも有力な石油輸出国であり、米国と中国は巨大石油生産国の中でも特異な存在であると言える。(表「国別石油生産量ベスト20(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-95%20Oil%20Production(Barrels).htm 参照)。

(2) 石油生産量の推移とOPECシェア

(上図「世界の石油生産(1965~2008年)」参照。拡大図:http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-95aOilProduction1965-.gif

  1965年の世界の石油生産量は3,181万B/Dであったが、その後生産は急激に拡大し、1980年には6,295万B/Dとほぼ倍増した。その後1980年代に石油需要は低迷したが、1990年代に入り再び生産は右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,810万B/D)以降急激に伸び2000年に7,486万B/D、2005年は8,109万B/Dに達している。これは米国での需要が堅調であったことに加え、中国、インドの消費量が急増したことが主たる要因である。その後は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産は停滞し、2008年は8,182万B/Dであった。

  これを地域別の生産量と世界全体に占めるシェアで見ると、1965年は北米が1,030万B/D(シェア32%)でもっとも多く、中東(839万B/D、26%)、欧州ユーラシア(565万B/D、18%)、中南米(433万B/D、14%)、アフリカ(224万B/D、7%)と続き、最も少なかったのはアジア・大洋州の90万B/D(3%)であった。しかしその後北米の生産量が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)の生産量が急成長したため、現在(2008年)では冒頭にも述べたとおり、シェアは中東、欧州・ユーラシア、北米の順位となっている。最近ではアフリカの生産が伸びており、同地域のシェアは13%に拡大している。

  OPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は45%であり、第一次及び第二次オイルショックの頃は50%近くに達した。しかし80年代に入るとシェアは急激に低下し85年には30%に落ちた。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大傾向にあり2000年、2005年は44%、2008年は45%に達した。

  上図で見ると1985年は世界の生産量が落ち込み、OPECのシェアがそれ以上に急落するという特異な様相を見せている。これはオイルショック時の価格暴騰が引き金となって世界の石油市場で需要の減少と価格の下落が同時に発生、これに対してOPECは世界平均を上回る大幅な減産を行ったためである。このときOPECのシェアは3割を切っており、OPEC加盟国が多い中東地域の生産量が急減したのである。

(石油篇第2回完)

(これまでの内容)

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

以上本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計レポート2009年版解説シリーズ:石油篇(1)

2009-06-15 | その他

*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

  2008年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆2,580億バレル(*)であり、可採年数(R/P)は42年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。

(*)バレルは石油で使われる単位で、1バレル=159リットル

  埋蔵量を地域別に見ると(上図。なお拡大図は「地域別石油埋蔵量(2008年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-91-Proved-Oil-Reserve.gif)、中東地域が全世界の埋蔵量の60%を占めている。これに次ぐのがヨーロッパ・ユーラシア地域の11%、アフリカ、中南米地域各10%、北米6%であり、最も少ないのがアジア・大洋州地域の3%である。このように世界の石油埋蔵量は圧倒的に中東地域が多い。

  次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはサウジアラビアの2,641億バレルであり、これは世界全体の21%を占めている。第二位はイラン(1,376億バレル、11%)、第三位イラク(1,150億バレル、9%)と続き、以下ベスト・テンにはクウェイト、ベネズエラ、UAE、ロシア、リビア、カザフスタン、ナイジェリアの各国が挙げられる。昨年に比べベネズエラとUAEの順位が逆転しているが、その他は昨年と同じである。これら10カ国の世界シェアの合計は81%に達する。このように石油は一部の国に偏在しているのである。(詳細は表「国別可採埋蔵量ベスト20(2008年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-91%20Proved%20Oil%20Reserve%20by%20Countries.htm参照)

  因みにOPECを構成する13カ国(*)の合計埋蔵量は9,558億バレル、世界全体の76%を占めている。次回石油篇(2)「生産量」で触れるが、OPECの生産量シェアは45%であり、埋蔵量シェアよりかなり低い。このためごく最近までは石油市場におけるOPECの発言力は強く無かった。しかし世界の埋蔵量の4分の3を有するOPEC諸国の存在感は決して小さくない。

(*)イラン、イラク、クウェイト、カタール、サウジアラビア、UAE、アルジェリア、アンゴラ、リビア、ナイジェリア、エクアドル、ベネズエラ及びインドネシア(なお2008年中にアンゴラ及びエクアドルが新規に加盟し、インドネシアは脱退した。)

  可採年数についてオイルショック直後の1980年以降の推移を見ると、1980年に29年であったものが80年代末には40年以上に伸びている。しかしこの可採年数はその後20年近く殆ど変化がなく2008年末は42年となっている(詳細は図「埋蔵量・生産量と可採年数の推移(1980~2008年) http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-92-History-of-Reserve.gif参照」)。

   1980年代に可採年数が伸びたのは、オイルショックの値上がりにより石油の消費(=生産)が減退する一方、石油の経済価値が高まった結果全世界で石油資源の探査活動が活発化し、埋蔵量が増加したためである。逆に1990年代は80年代に油価の低迷により探査活動も低迷、その反面景気の回復により石油の消費が着実に増加したことにより可採年数は毎年少しずつ短くなった。2000年以降も石油の消費(=生産量)は毎年増加しているが、増加分を補う追加埋蔵量があったため、可採年数は横這い状態で推移している。

(石油篇第1回完)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月13日)

2009-06-13 | 今日のニュース

・石油市場は最悪期を脱出:OPEC月例報告

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(6/7-6/13)

2009-06-13 | 今週のエネルギー関連新聞発表
6/9 コスモ石油     ヒュンダイオイルバンク株式会社とのパラキシレン事業合弁会社設立に向けた基本合意書の締結並びにパラキシレン事業への新規参入について http://www.cosmo-oil.co.jp/press/p_090609/index.html
6/10 AOCホールディングス     アラビア石油子会社の新華南石油開発(株)が「石油技術協会賞業績賞」を受賞 http://www.aochd.co.jp/newstopics/20090602.html
6/12 出光興産     『世界一長寿のクラシック音楽番組』として「題名のない音楽会」がギネス世界記録TMに認定! http://www.idemitsu.co.jp/company/information/news/2009/090612.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする