ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

参宮橋社会実験

2005年07月13日 | ITS
参宮橋社会実験の報告内容を入手した。

まず、間違いを訂正しておく。
以前の記事で、ビーコン付きのクルマは商業車を入れればパーセンテージは一桁の下の方だろう、と書いたが、実際は10%とのこと。当然ビーコン付きは高級乗用車が多いため、休日・夜間でその%は上がる。また、右車線走行車で10%超、左車線走行車が7-8%とのことだ。

実験実施期間は3月1日から5月31日までの92日間。
期間中の4月27日に、渋滞末尾情報板がカーブ手前に設置された。
但しカーブ手前路面の赤い縞模様がいつから施されたかは言及無いため不明。

サービス前後の比較として、2004年10月15日から11月12日の間の28日間と、本実験の92日間のデータが掲載されている。
期間に三倍以上の差があるにもかかわらず、「導入前」で30件あった事故が「導入後」では14件に減っている。日数を掛け合わせれば、実に1/7に減少したことになる。

これだけを示されれば、ものすごい効果である。

しかし、単純に疑問に思うことは、何故ビーコン装着車が10%しかないのに1/7になるのか、ということだ。
さらに内容をよく見ると、カーブ先に低速車、事故車が存在せず、ビーコン装着車にも警告が出ない状態で発生した事故、つまりは今回の実験とは無関係な事故も19件から8件に減少している。これも日数で計算すれば1/7である。

ここから想像できることは、事故の減少に寄与したのはビーコン表示ではなく、その他の要因があるのではないか、例えば赤い路面警告のような路側警告表示が効を奏したのではないか、ということだ。不思議なことに報告書はその部分にまったく触れていない。

もちろん、ビーコン装着車への好影響は否定しない。直後の渋滞情報が、警告音とともにナビ画面に表示されるのだから、事故防止に寄与するのは当然である。対象車両及びその後続車の安全性が向上したことは明らかだ。先日も書いたとおり、実験するまでもなく当たり前だと思うが、決してそれを無意味だというつもりはない。

しかし、今回のこの実験の結果をもって、「効果があることは証明されたので(基本的には)本格導入する」という結論に至っているのは大いに疑問である。

何故10%のクルマ(とその後続車)にしか恩恵がない安全設備に公共投資をする必要があるのか?
今回の実験でも、路車間通信よりも路側表示の方が安全に寄与したのではないのか。
そっちを整備するのがまず先なのではないのか。