ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

第2回日本ITS推進フォーラム その4

2007年11月12日 | ITS
赤羽教授がコーディネイトしたパネルディスカッションであるが、私なりにその趣旨をサマリーしてみたい。

1.交通事故死者は漸減しているが、事故発生件数は高止まり。何故か?
 事故の原因・発生要因の分析が出来ているか?対策は立てられているか?
 その対策は正しいか?
2.効果のある正しい対策を立案するためには、事故発生要因・過程に迫る必要がある。
3.事故は人間が起こすものなので、防止のためには人間の行動に割ってはいる必要がある。
 どういう介入が最も効果をもたらすかをきちんと分析するべき。
4.ITSは目的ではない。発生要因・過程がわからなければいくらハイテクを使っても事故は防げない。
 逆に事故発生要因・過程の分析にハイテクを駆使するならば、それもITSだろう。

ということで、パネリストはGOOGLEマップとDBソフトの組み合わせで事故地点をプロットし、分析した南部氏、ドライブレコーダのデータを活用して事故発生原因に迫ろうとしているJARIの荒井氏、事故防止について現場で健闘されている首都高速の伊東氏など、事故の発生要因・過程に迫ろうとしている方々を招いている。

一方でスマートウェイだが。
参宮橋実験で効果を否定されたVICSビーコンによる渋滞情報のナビ画面表示にしても、首都高実験で「お金を払う価値がない」と評価され、両角氏も「今の状態は無駄な情報が多すぎ、運転支援になっていない」と評価しているDSRC車載器によるナビ画面表示にしても、効果測定結果はネガティブだったとしか思えない。

この状況を知りつつITS Japanが2008年の大規模実験まで突き進むとしたら、まさに赤羽教授が危惧する「ITSを目的としている」状態だ。

しかし、いまだにどうやらやる気満々のようだ。

パネリストに名を連ねたITS Japanの緑川常務理事は、「JAFに頼んだアンケート調査では、8割の人が安全情報を欲しいといっている」と発言され、ITS-SAFETY 2010は推進するのだ、という意思を表明された。

でも、前に指摘した通りこのアンケートは設計がお粗末なので忘れたほうが良い。
こんなものを手がかりに政策を決定されたらかなわない。
そもそも、一般論で「事故回避の情報が事前に提供されたら良いと思うか」と聞かれれば、普通はYESだろう。NOという理由がない。

ITS Japanとしては、IT新改革戦略を受けてここまでやってきたプロジェクトをとめるわけには行かないのだろう。

専用ロゴも出来ちゃったし。

しかし、こんな薄弱な根拠を手がかりにすすめても、後から手痛いツケが来る。
特にこの話はITS車載器という民生用ハードウェアが絡んでいるので、外すと痛い。

一度見直すタイミングだと思うけどね。