ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

歩行者感知システムの実現性

2008年08月16日 | 自動運転
前回から引き続き。

来年にかけて実施されるITS-Safety「安全運転支援システム」大規模実験の中の一つに、歩行者感知センサーを設置して横断者がいることを車載モニターもしくはスピーカーに警報を発して右左折時の事故を防ぐ、という項目がある。

こんなことよりも歩車分離信号がより確実でシンプルな解決策だ、と書いた。

センサーで歩行者を検知するというが、そもそも実際の運用としてうまく働くのだろうか。歩行者交通量の多い交差点では必ず警報がでることになる。
交差点進入時にモニターを見ることは危険だから、警報は音声で提供されることになるだろう。これだと、交差点進入時には大抵警報が鳴ることになり、「オオカミ少年」状態になってしまう可能性がある。

しかし、本当に危険なのは視界に入らない後方からくる自転車や、走ってくる子供などだ。こうした「本当に危険な状態」を警報音のレベルを変えるなどで選択的に警報することはある程度まで可能だろう。
でも問題は技術的にどこまでの精度が確保できるかだ。

仮に精度の高いシステムを確立できたとしても、警報は安全サイドにマージンを取ることになるだろう。行政は「警報がならならったから事故が起きた」というような訴訟を避けたい。

結局、交差点進入時には警報が鳴ることが多くなる。
警報がなれば、自分の目では安全が確認できたとしても一時停止や徐行をする。場合によってはこれは歩車分離信号よりも渋滞を引き起こすかもしれない。

やはり、歩車分離信号のほうがはるかに現実的だ。
それも、今すぐできることなのだ。車+通信はそのあとで考えればいい。

ITS-Safetyは世界に先駆けて通信を利用した安全運転支援を実用化するのだ、と言っているが、歩車分離を進めている各国からは逆に笑われるんじゃないかと思う。

DSRC活用の右折支援システムなどは典型だ。ITS世界会議で海外参加者から「なぜ右折矢印信号にしないのか」という単純な質問がでたらどうこたえるのだろうか?
信号機は警察の管轄ですから、とでもいうのかな?