ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

高速道路無料化の正論

2010年09月05日 | 高速道路
ご承知のとおり、高速道路無料化についていろいろな議論がされている。
果たしてなにが正論なのだろうか?

まずは無料化推進論から。

・経済波及効果は2.7兆円(疑問)

これは国交省の所属機関である国土技術政策総合研究所が、2007年に行った試算とされている。
しかし、この経済波及効果というのは、走行時間の短縮、走行経費の減少、交通事故の減少を金額に換算したものであり、実際に新しいマーケットを創造するものではない。
短縮された時間に、時間当たり賃金をかけて計算しているが、これはあくまで机上の経済効果。実経済への影響はあまりないだろう。
また、交通事故の減少は(被害者の方には申し訳ない言い方だが)修理業者にとっては需要減であり経済波及効果はマイナスに働く。

・出入り口を容易に作ることが可能。そこは21世紀の駅前となり、地域経済が栄える。(疑問)

山崎養世氏の日本列島快走論より
全く根拠のない主張。実例を見せてほしい。
アメリカのフリーウェイや欧州の無料高速の出入り口がそうなっているか?
従来国道沿いの廃れるビジネスとのトレードオフになぜ言及しないのか?全体としての市場規模が拡大する論理的根拠がない。

・料金所がなくなるので渋滞は問題ない(暴論)

同じく山崎氏の日本列島快走論より
高速道路の渋滞は過大トラフックによる自然渋滞がメイン。山崎氏が長年過ごされたカリフォルニアでも、良くいかれるドイツでも、料金所はないけど渋滞は深刻な問題のはずでは?

・渋滞は増加するが、一定のレベルで収斂する(正しいが暴論)

無料化でトラフィックは増加するが、ある程度渋滞が激しくなれば利用しなくなるユーザーも出てくるので、渋滞は一定のレベルで収まる、という意見。
まあそうかもしれないけど、これは
「高速道路と一般道路の早く到着するほうを選択する」
ということになり、高速道路の意味を成さなくなる。

・渋滞の懸念される2割の道路を有料のままにすれば、ロードプライシング効果で渋滞は悪化しない(疑問)

高速道路無料化で公共交通からシフトするトラフィックがあるだろう。
これらは、都市部に近付いて有料になったからと言って一般道路に下りたり、そこで車を駐車して電車に乗り換えたりはしない。
都市部の渋滞は確実に悪化する。

・クルマの量は同じなので渋滞の悪化には限界がある(暴論)

高速道路の無料化は新規需要と公共交通機関からのシフト需要を喚起する。
クルマの量は同じというのはあまりに単純。

・日本の高速道路料金は高すぎる(正論)

これはそのとおりだろう。正規料金は海外の有料高速道路と比較して著しく高い。
しかし、新幹線もフランスのTGVと比べれば倍以上。
そもそもわが国は長距離移動の社会インフラに課されている金額が高すぎるのではないか。

・クルマに対する税金で高速道路無料化の財源は確保されているはずだ(たぶん正論)

詳細の内容チェックまでしていないので断言はしないが、暫定税率などを考えればおそらく正しいだろう。

・高速道路の無料化は過疎・過密を緩和する(正論)

これはたぶん、正しいと思う。欧米の企業は都市から2-30km離れた郊外に本社をもつケースが多いが、これは高速道路が無料であることと関係があるだろう。
従業員の通勤を考えると高速道路前提の立地は日本ではありえない。
とはいえ、地方の過疎対策にまでなるかというとちょっと疑問。

・高速道路無料化で一般道から高速にシフトされることで、交通事故が減少する(正論)

自動車専用道の方が交通事故発生率が少ないのは周知の事実。

この項続く。