ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 消えたETC2.0

2017年07月05日 | ITS
5月末、国交省は官民 ITS 構想・ロードマップ 2017を公表した。かなりボリュームのあるPDF。

ITSと銘うっているものの、サブタイトルも「多様な高度自動運転システムの社会実装に向けて」となっており現時点における国の自動運転に関する考え方が書いてある書類だと思えばいい。
以前に宣言した「2020年までに世界一安全な道路交通社会を構築」という旗印はおろしていないものの、当時のITS政策の目玉であったETC2.0による安全運転支援はほぼ影も形もなくなっている。ETC2.0はこのロードマップにも(この膨大な資料中)数か所登場するが、あくまで交通関連データ収集方法の一つとしての位置づけでしかない。

交通関連データとは、車から位置、挙動情報を収集しビッグデータとして処理を行うことで事故防止、渋滞緩和、自動運転支援につなげることだが、道路上に高額なポストを設置し、そこを通過したときしかデータのやり取りができないETC2.0と移動体通信でリアルタイムにデータのやり取りができる民間のシステムを比較すれば、どちらが優れているかなんて考えるまでもない。

しかしロードマップでは「ETC2.0の普及促進」は依然として謳われており、釈然としないものがある。推進している部署への配慮なのかもしれないが、もう税金の無駄使いでしかないのだから本当にやめたらどうかと思う。

自動運転に関しては、このロードマップの立ち位置はなかなか微妙なものがある。
自動運転は精密3Dマップと自動車に装備された各種センサー、制御機器が中心となり、インフラに頼る部分は実はあまり多くない。ロードマップでもその辺はわかっているようで、多くはカーメーカーを始めとする民間に委ねられ官はそれを補助していくような記載になっている。それはそれで正しい方向だと私は思う。官は自動運転過渡期に必要となる専用レーンとか、センサー判定がしやすいような車線、交差点表示などでのインフラ整備とそれに加えて法整備で協力していくべきだろう。

いずれにしてもETC2.0による安全運転支援は完全に国のロードマップから消滅した。
これはこのブログで10年以上前からそんなものに実効はないと散々指摘してきたことだが、首都高速道路でインチキ実証実験をやったり、なりふり構わず250億円の税金をつかって高速道路にポストを設置した責任は結局誰も取らないのだろうか。