ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

NEXCO中日本、駐車場でのETCカード決済を試行

2017年07月27日 | ITS
NEXCO中日本WEBページ
駐車場におけるETCカード決済のモニター募集

かなり昔から、このブログではETCの高速道路外利用(駐車場、ドライブスルー、ガソリンスタンド等)には無理があると言い続けてきた。
その中で、唯一可能性があるのは駐車場だが、それも課題があると言ってきた。

駐車場にノンストップで出入りできカードで決済されるなら私も使う。利用者側に障害はない。
課題は設備業者側にあると考えている。
まず、その設備投資。これを備えたから収益が上がる保証はない。駐車場は立地で選ぶもので、料金支払い方法で選ぶものではない。一方で100%ETC決済になるまでは係員をなくすわけにも行かず、コスト低減にもならない。
次に、商業施設との提携割引処理。利用割引をするためにはETCカードを抜き取って精算時に処理をする必要がある。またそのネットワークにも費用がかかる。専用事前精算機を作る方法もあるが、ノンストップでなくなる。

しかし、ETC2.0普及促進研究会という企業研究会が未だに諦めずに高速道路外利用を進めているようだ。

ETC2.0普及促進研究会という名前だが、今回の実験は通常ETCも対象。なぜならすでに10年前から「利用車番号サービス」(者ではない)という仕組みが出来上がっていて、ETC車載器の固有番号とクレカの紐付け、決済を可能にしてETCの商業利用を促進しようとしていたからだ。
7月27日追記:レスポンスによれば、今回の実験は利用者番号を使わず、ETCカードのクレカ情報を直接読み込むとのこと。
しかし、このサービスに乗り出す企業はなく、事実上お蔵入りになっていた。
ETC2.0でなくてはできないサービスではないのだ。

ETCの駐車場利用はかつて三菱商事系のITS事業企画(IBA)という会社が手がけていたが、会社は消滅(タイムズの一部として引き継がれている)、事業もフェリーのチェックインと箱根ターンパイク料金収受程度しか残っていない。

IBAの駐車場事業がなぜうまく行かなかったかきちんと分析できているのだろうか?今回の実験は運用面だけのように見えるが、果たしてビジネスの将来性に関する目処はついているのだろうか?

東京オリンピックで外国人観光客は増えるのか(改)

2017年07月27日 | 雑記
2018年7月 内容を見直し

報道やその他の論調では2020年の東京オリンピックには沢山の外国人観光客が来ることが既成事実のように語られているが、私はどうもピンとこない。
自分の感覚でいえば、40インチの液晶画面で自宅のソファにすわって見ることができるイベントをわざわざ混雑した会場まで出向いて観たいとおもわない。
本当にわんさか海外から観光客が来るのだろうか、疑問に感じて調べてみた。

国交省が3年ほど前に東京オリンピックの日当たり来場者を92万人と発表しこの数字が独り歩きしているが、これは来場者でありおそらく大半は日本人、それも首都圏の人だろう。
しかしこの数字を来日観光客数だと錯覚してる人(メディアすら)も多い。

実際のオリンピック来日観光客予想数に関しては、ある銀行系総研の予想では80万人程度だという。その根拠はチケット総数1000万枚、重複観戦があるので観戦者数を半分と見て500万人、ロンドンオリンピックでは観戦者に占める外国人比率が16%だったのでそれを引用し、80万人。

一方、2017年の来日観光客数は2700万人。これをざっくりオリンピック期間の15日で割れば、110万人。
つまり、いま来ている海外からの観光客とほぼ同じ人数の外国人が日本にやってくることになる。これはやはりスゴイことだ。

..と思ったら大間違いなのだ。

計算の前提として、ロンドンの16%をそのまま引用してもいいのか、というのがある。ヨーロッパの主要都市からロンドンまで飛行機で2~3時間程度。ヨーロッパは案外狭い。
日本の場合手軽に飛んでこれる国は韓国、中国、台湾くらいしかない。多分、16%には届かないだろう。

さらに、オリンピック期間は航空券、ホテルともに値上がりする。オリンピックのために来日する人は日程が固定されているので、完全に売り手市場になるからだ。
オリンピックを生で観戦することに興味がない観光客はどうするか?考えるまでもなくその時期ははずすことになる。
また、企業もイベントや会議を控えることは間違いない。

ということで、期間中一般来日外国人は激減すると思ったほうがいい。
そもそも空港や航空便のキャパシティの関係から、80万人の純増はありえないのだが、まあそれでも総数は増えるだろうと思ったら甘い。
ロンドンオリンピックではロンドンの海外観光客数はオリンピック期間中なんと純減している。

さらに厄介なことに、オリンピックに来場する観光客はオリンピックが目的なのでその他の観光はあまりしない、という調査結果がロンドンオリンピックででており、むしろ日本の観光全体としてはマイナスになる可能性すら有る。

出場選手とその関係者や家族等で5万人程度が来日することは間違いないし、実際に生で観戦したいというコアなファンもいるのでオリンピックで来日する外国人の総数はそれなりの数字になるだろう。リオでも40万人が海外から来ている。しかし決して外国人観光客で日本があふれかえるわけではないということをしっかりと認識したほうがいい。むしろ、一般の観光客は減る。
これを見誤るとビジネスは失敗する。