ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

なぜ日本人は現金払いが好きなのか

2017年07月11日 | モバイル・ウエアラブル
中国の都市部で生活していると、スマホによるキャッシュレス決済(ALIPAY、WeChatPAY)が普通になってしまい現金を使うことがほとんどない。この話題は最近になって中国のシェア自転車とセットで日本のニュースでも目にすることが多くなってきた。
さらに最近見たニュースでは、日本のキャッシュレス決済比率は対中国だけでなく、欧米等世界的に見てもかなり低いようだ。

その理由として、日本では偽札がない、お札がきれいだから現金に嫌悪感がない、店員が優秀だからすぐお釣りが帰ってくる、などと言う人もいるが、これは全く当たらない。なぜなら私が中国で現金を使わない理由としては一つも該当しないからだ。また、お札の綺麗さや偽札ということであればユーロ圏より低いことの説明がつかない。

私の考える理由は以下の通り。
まず、日本のクレジットカードの利用率が先進国の中では飛び抜けて低いということ。
各種調査によると、クレカを使わない最大の理由は金銭管理、次にセキュリティへの心配だそうだ。
クレカは与信されているので貯金額以上の支出が可能だから、金銭管理で不安というのはわかる。それはクレカのせいではなく金銭管理の問題だろうが、たしかにそれはある。ならば、デビットカードにすればいいと思うのだが、日本では普及はおろか、一般にデビットカードとはなにかすら知られていないのではないか。デビットカードは銀行口座から直接引き落としで残高不足だと使えない。以前は銀行口座と店舗レジが直結していなかったので出現したのは最近のことだが、海外では普通に使われている。(ちなみに私は本当はクレカなんかいらない。預金残高以上の買い物をしたことがない。たいていの人はそうなんじゃないかと思う)
次にセキュリティでいえば、これは得体の知れないリスクへの過剰反応としか言いようがない。全世界的にクレカ取引の総数は膨大なもので、よく報道されるようなクレカ詐欺に遭遇する確率は極めて低いし、しかもその損害は通常はカード会社が補填してくれる。

日本ではすでにFeliCaによるキャッシュレスが随分前から立ち上がっているというのも一因かもしれない。しかしこれの利用率も特に高くない。プリペイドなんて面倒でやってられないから通常の利便を考えたらオートチャージかクレカ引き落としでないと意味がない。
しかしその為には専用クレカを作れだの、オートチャージは改札通らなきゃできないだの制約が多い。スマホで支払うにしても結構手続きは煩雑だ。
またFeliCaは現金と同じで落としたらおしまい。

中国でスマホ決済がある時期を境にあっという間に広がったのは、手続きの簡単さとバーコード読み取り機だけですむ店舗側の投資の低さに有る。スマホに専用アプリを入れて、銀行デビットカードを紐付けするのに大した手間はなくすぐ使える。使用時は暗証か指紋を入れる必要があるので落としても使われる心配はない。(併せてALIPAYとWeChatPayのインセンティブ合戦、及び多様なアプリケーション(タクシー配車、レストラン割引等)への拡大の影響も大きい)

しかし、日本でバーコード読み取り式のスマホキャッシュレス決済を広めることは難しいだろう。すでにFeliCa対応レジを導入しているし、ユーザーもオートチャージならFelicaから乗り換えるインセンティブはあまりない。
しかしそのFeliCaにしても、NFC規格が日本独自で海外の非接触ICカードと互換性がないという。これは将来スマホNFC決済がもっと一般的になったとして、海外に行っても使えない、海外観光客も使えないという、2G携帯規格のようなよくあるパターンに陥ることになる。

ということで、私は日本のキャッシュレス決済比率が低いのは国民性として現金が好きなわけではなく、仕組み・環境の悪さにあるとしか思えない。

余談だが、クレカは使わないという人は通販の支払いをどうしているのだろうか?銀行振込とかコンビニ払い、着払にしている?