ITSを疑う

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EV(電気自動車)に対する中国の本気度とその理由

2017年12月06日 | ITS
中国は2020年までにEVの充電設備を全土で480万ヶ所まで増設すると発表した。現在は19万ヶ所。
2020年までにということは、あと3年。その費用は2兆円を超えるという。中国は中央政府がやると決めたらなんでもできる国なので、これは本当なのだろう。
ちなみに日本のEV充電設備は通常と急速をあわせて2万ヶ所、アメリカでも6万ヶ所程度。

現在の中国におけるEVの状況は、売れている車の数はそこそこ(全世界のEVの約半分は中国国内向けの中国製)なのだが、その実態は決して芳しくない。
(なお、ここでいうEVとはPHEVを含み、HVを含まない)
中国で最も売れているEVはBYDのPHEVなのだが、実態として殆ど充電はされずガソリン走行が主体となっている。なぜそのようなことが起きているかというと、EVが欲しくて買っているというよりは各種補助政策によるものなのだ。
EV,PHEVは購入補助がある。が、それ以上に大きいのは車両増加規制でナンバープレートの発給を制限している大都市でもEV,PHEVは優先的に廉価でナンバーが貰えるのだ。
おそらくは、お金の問題よりもすぐにナンバーが貰えることのメリットのほうが大きい。

こうした大都市部ではほぼ100%の人がアパートやマンションに住んでおり、住居に隣接したガレージはない。自宅では充電したくてもできないのだ。
中国では実際のところ好きこのんでEVに乗っているユーザーは極めて少ないということができる。

そうした中で政府が充電設備の急激な拡充を行うということは、中国政府が本気でEVを推進しようとしているということにほかならない。
今後は公共的な充電設備拡充にあわせ、多分集合住宅等への充電ポスト義務付け等強引な政策を打ってくると考えられる。
その理由は2つある。

ひとつは大気汚染。ご存知PM2.5の半分近くは車から生成されていると言われており、今後更に車両の台数が増える中国では大気汚染対策としてのEV化はもっともなことだ。

もう一つは、自国の自動車産業の発展。このとても大きな目標のため戦略的に国内充電設備の拡充を行うのだ、と私は見ている。
それはどういうことか?

現在、世の中にある製品でおよそ中国製が先進国に輸出できていない(OEMを含め)ものは飛行機と自動車だけだろう。
自動車に関してはすでに日欧米企業との合弁などからローカルメーカーもかなり学んできており、品質レベルも上がってきているが心臓部であるエンジンを自分で作れない。
ローカルメーカーが自社で設計生産してるエンジンも良く言えば日欧米メーカーのエンジンのリバースエンジニアリング、普通の言い方では真似したものでしかなく、国際競争力はない。

EV化によりこの制約がなくなることで中国自動車メーカーのグローバル化が見えてくる。
まず自国市場で圧倒的な数のEVを普及させれば生産台数で日欧米メーカーを凌駕することができる。これは電池、インバーターと言ったEVの主要部品で非常に大きなコスト競争力を生む。
中国ローカルブランドで日欧米に輸出することは難しいかもしれないが、OEMであれば、あるいはすでに手に入れているボルボ等のブランドであれば輸出国になる事は可能だ。よく言われることだがiPhoneが中国製だからといって嫌がる人はいない。

中国政府がEVに関して大きな勝負に出ようとしている事は間違いない。