ITSを疑う

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NIO(上海蔚来汽車)EVの衝撃

2018年03月07日 | 中国生活
日本では殆ど知られておらず、ニュースにもなっていないが中国のベンチャーEVメーカー上海蔚来汽車(ブランド名NIO)が昨12月に発表した7人乗りSUV「ES8」が凄い。
NIO ES8 企業website
日本語のソースは殆どないが、レスポンスの記事をリンクしておく。

実車を見てきたが、スタイリングに中国車的な破綻はなく、おそらく欧州デザイナーの手によるものだろう。
驚くべき内容はその装備。航続500kmのEVで、0-100km4.4秒、リンク先にあるようにニュルでも速い。自動運転系はレベル2相当。スマートスピーカーのような仕組みで音声で車両のエンタメ、ナビ、空調等をコントロールできる。電動シート、電動テールゲート、感応ポップアップ式ドアハンドル、携帯無線充電、等ハイテク電子装備は思いつくものは全部ついている。助手席がロングスライドしオットマンがついてファーストクラスシートのようになるのも面白い。サスペンションは車高調整可能なエアサス、また電池を3分で交換するステーションも設置されるという。
車両価格は45万元~55万元(7-800万円)と決して安くはないが、テスラXは1000万円超。また中国ではドイツ車のSUVがこの程度の価格なので、高性能EVとしては装備を考えると相当割安な価格だといえる。
中国ではすでに2万台が予約販売されている。
特にEVはナンバー規制対象外なので、上海や北京ですぐ登録可能、加えて10万元近いナンバー取得費用がかからない、ということも大きいのだろうが、それを抜きにしても誰もが欲しくなるような車であることは間違いない。

このメーカー、まだ創業3年ながら世界中から人材を集めドイツ、英国、カリフォルニアにも開発拠点を持っている。どう考えても中国の自動車産業出身者だけの力でこれだけの車を作ることはできないし、3年という短期間で車を商品化できたというのも時間をお金で買った(=経験者を世界中から集めた)からだろう。実際、NIOアメリカのCEOはCISCOのCTOを務めていた女性。

私が中国に来た2012年当時、まだ中国ローカルブランドのスマホは購入対象品ではなく、iPhone、サムソン、ソニー、モトローラ、台湾HTC等が選択肢だった。それが今、Huawei,OPPO,VIVO,小米といったローカルメーカーが性能、品質、商品性において急成長し、iPhoneとギャラクシー以外は駆逐されてしまった。実際私もHuaweiの上級モデルを満足して使っている。

これと同じことがいずれ車にも起きる可能性はあると以前予言した。しかしそれにはまだ相当の時間がかかるので日本メーカーはスマホの二の舞いとならないようにすべきだろうし、日本の自動車産業にはその力があると信じていた。

しかし、今私はNIOで本当に衝撃を受けた。それは中国メーカーのスピードだ。まさかここまで完成度が高い商品を出してくるとは思わなかった。

NIOの品質、信頼性はまだ未知数だ。創業3年ということで彼らには過去の失敗の蓄積がない。商品の信頼性を決めるのは失敗の蓄積によって築かれたスペックなのだ。
NIOは人材引き抜きでカーメーカーのノウハウをかなり手に入れているとは思うが、実際の商品は世に出して見ないとなにが起きるかわからない。そのために事前に耐久試験を行うのだが、創業3年ということは量産相当の試作車両ができてから発売までの間はせいぜい1年程度しかかなっただろう。しかも初めての商品。おそらくはかなりの信頼性に関わる不具合がでるだろう。

しかし、だからといって「ほらみたことか、中国企業なんかダメだ」といって安心してると危ない。これは物理的な時間があればいずれ改善される問題なのだ。

日本では中国製=低品質という既成概念がある。実際まだ多くの商品でそれは事実なのだが、先進企業は相当なレベルになっている事をしっかり認識するべきだ。
スマホや家電の失敗を車で繰り返すことは絶対にあってはならない。