作家の井上ひさしさんは、少年時代辞書を万引きして本屋のおばあさんにつかまったことがあります。
その時、おばあさんはどのように説教をしたのか、毎日新聞の「余禄」欄にとても良い記事が載っていましたので紹介します。
ちょうど今、古物商の「まんだらけ」が万引き犯をインターネット上で公開するということで物議をかもしていますね。万引きに業を煮やしている人も多いようで、この話に喝采する向きも多かったようです。
井上ひさし(1934~2010)さんは、小説家・劇作家・放送作家で文化功労者・日本芸術院会員です。
(おばあさん)「これを売ると百円のもうけ、坊やに持って行かれてしまうと、儲けはフイになって定価の五百円の損がでる。その五百円をかせぐには同じ本を五冊売らなければならない」
(井上少年)こわごわうなずく。
(おばあさん)「うちは六人家族だから、こういう本をひと月百冊も二百冊も売らなければならない。でも坊やのような人が三十人もいてごらん。六人は餓死しなければならない。坊やのやったことは人殺しに近いんだよ」
ー 井上少年は薪割りを命じられた ー
ー 薪割りが片付くと、おばあさんは少年に辞書を渡した。ー
(おばあさん)「代金は薪割りの手間賃から差っ引いておくよ」。
少年は欲しいものは働いて買うだと教えてくれた人生の恩人を大作家となった後も忘れられなかった。
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このおばあさんの対処法は大岡裁きのように鮮やかでしたね。なんといっても情があります。 罰する側より、万引きをする側が問題です。このおばあさんの対処法はとても説得力がありますね。学校も、家庭ももっとこのおばあさんのような教育をしっかりとしていくべきでしょう。