たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

心に残る思い出の山 皇海山(2143.6)=日本百名山認定

2020年07月11日 | 心に残る思い出の山

登り2:25  下り1:55  休憩1:45

目指したのは山中泊が必要な庚申山から縦走せずに直接、皇海山(すかいざん)へ登れる登山口だ。 利根村を過ぎゲートを越えてからの道程が長かった。愛くるしい眼の鹿や狸に何度も出会った。速度を落し近づいても慌てる様子も無い。車を停めると漸く面倒臭そうに崖を下って行った。 その動きがまるでスローモーションの様で不思議な感覚だった。 そんな中、真ん丸と太った子狸(後姿で定かでない)が左方向から飛び出した。意地悪く追いかけると子狸は全力で車の前を駆ける。ボールがコロコロ転がって行く様だ。 繁みに姿を消したのは100mほど走ってからだった。

夜道ならではの体験に一時、気は紛れるが何せ長い林道、道路の3分の1は落石に埋まっている。今にも崩れそうな崖は距離の長さと共に不安を募らせた。

擦れ違いで待っていてくれたドライバーに尋ね登山口が近い事を知る事が出来たが何も無い林道を登山口から逆方向に1時過ぎ・・・あの人は一体、何者??? 結局、皇海橋まで1時間を要した。

闇夜の山中は本当に暗い、2台ほど停まっている車の中の人を起こさぬ様、寝袋にくるまった。

腹ごしらえをして6時45分、いよいよ入山。登りたい登りたいと日頃から思っていた山なので胸が高鳴る。

   

沢沿いを約1時間半、登り詰めると細くなった沢の流れは何時しか消えて、そこから尾根へ突き上げる登山道を約10分、皇海山と鋸山の鞍部「不動沢のコル」に着いた。

右に鋸山の岩峰が近い、時間的には30分で行けるので帰り足を伸ばす事は可能だ。しかし、そこまで天候が持ってくれるかどうか。

ここで左に向きを変え穏急繰り返しの登山道を時に笹を分けながら進む事50分、「お疲れ様~」と言う4名の声が私達を迎えてくれた。登山口から約2時間半、一度も休憩を取らずの登頂だった。

黑木に囲まれているのでスカッとした展望は無いが日光白根山、燧ヶ岳、至仏山から武尊山、その間に残雪を光らせた平ヶ岳、反対側には鋸山から庚申山に続く稜線、そして袈裟丸山といった主要な山々の提供はケチらない。

雰囲気も申し分なく何処となく鳥甲山に似て時間が経てば経つほど充足感が高まる山だった。これが百名山の持つ貫録なのかもしれない。ただ青銅の剣は探してみたが何処にも見当たらなかった。

同定を終え腰を下ろそうとした途端、雨滴が頬に当たった。そして10分もしない内にポツポツがシトシトにかわり雨具無しではいられなくなった。帰りに雨に成る事は覚悟の上だったが、こうも早く来ようとは。

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下山途中、深い笹の中で大パーティーと擦れ違い登り優先の弱みで体を細くして通り過ぎるのを待っていたが譲っても譲ってもキリが無く2m空いたのを幸いに強引に突っ込み不動のコルまでノンストップで下った。が途中、木の根に躓いたのが原因で片足を引きずりながらの到着だった。雄さんに指を引っ張って貰い何とか痛みは和らいだが鋸山は止めた方が良さそうだ。

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それにしても雨の下りほど侘しい物は無い。今日はポンチョなので汗が外に出ず余計に気分が塞いでしまう。「なぜ土日になると雨になるのよ~」ついつい愚痴が出てしまう。  嫌な笹道を抜けるとカラマツ林に出た。緑は一層、輝きを増し目も覚めんばかりの美しさだった。岩盤を掛け下る水流も入山時よりも心なしか激しさが感じられる。前方が明るくなり気が付けば雨は止んでいた。

何時しか沢幅が広くなり流れの勢いも一段落、私達は河原の大石の上で未だ開けていないお弁当を広げた。風が実に清々しい。

山での雄さんの楽しみ

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その時、かなり年配の男性が二人おりてきた。川を渡ろうとした時の事だ。後ろを歩いていた男性が足を滑らせて横転、大岩で額を切ってしまったのである。 雄さんが直ぐにザックから救急用品を取りだし応急の手当てをした。「かなり深いので縫わないと駄目かもな」と雄さんは2人が去ったあと言っていたが、それにしても、あの二人、ショックの方が大きかったのかお礼の一言も無かったよな。

休んでいるとまた嫌な風が吹いて来た。こうなったら急がなくては。ノンビリムードから一転、手早く荷物を詰め込み駐車場へと急いだ。

林道は昼間走ってもやはり長かった。「何?あれ」 林道の両側が鮮やかな黄色で染まっている。昨夜、ここを通った時なぜ気付かなかったか。きっと子狸のせいだろう。レンギョウに似ているが一寸違う。皇海山があまり植生が豊かで無かった分、その埋め合わせか。 かなり派手派手な姿でのお出ましだった。(この花の名前がエニシダである事を後で知った)

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白沢温泉は車の台数の多さにうんざり、川場村の温泉施設で一浴する事にした。入浴後、落ち着ける場所が無いので別室にある電動マッサージ機にかかっていると隣の広間からボリュームいっぱいで流れてくるカラオケ。得意そうに披露する中年女性の姿が目に浮かぶが、どれもこれも聞くに絶えないものばかり。マッサージが終わるや早々に退散した。