たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

(続)小楢山

2020年11月24日 | 心に残る思い出の山

続き

出だしの階段登りを終えると道は下りとなり標高は完全に峠より下がってしまった。旧道と新道の分岐点(行程のほぼ中間点)に来て漸く尾根の取りつきに入った。それも一気に高度を取り戻すかの様な急な登りだ。

一面ススキの斜面を朝露に濡れながら喘ぎ登る途中、左手にドッシリと構えた金峰山が見えて来た。五丈岩も大きく指呼の間である。後方には甲斐駒ケ岳と鋸岳も青い山体を木の間に覗かせている。幕岩からの展望の期待が一気に高まった。

稜線に乗ると急な登りも一服し嫌な笹道を急ぎ足で通過すると間もなく、傍らに朽ちた四角い水槽が有る一杯清水に出た。以前は飲み水に使用されていた様だが今はとても飲める状態では無く又、飲む気にもなれない。此処から先は明るい樹林帯となり秋を告げるアザミ、マツムシソウ、リンドウ等々が疎らに道を彩っていた。

やがて樹林を抜け夢窓国師が歩き廻ったと言う開放的な錫杖ヶ原に着くと展望もにわかに広がり再び金峰山が姿を見せた。左隣には八ヶ岳が美しく南アルプス群は山ひだがクッキリと、まるで屏風の様に連なっている。

何よりも私達を驚かせたもの。それは空の青を背景に、くっきりと浮かぶ富士山。秀麗という言葉は富士山だけにのみ有る様なそんな想いを抱かせる姿だった。

南アルプスの連なり

今年は雨が多かったせいか山頂から幕岩までの道はキノコのオンパレードだった。雄さんはさっそくハナイグチを採取。途中、小さな岩峰を超えれば、いよいよ この山のハイライト、幕岩が待っている。 幕岩は恵林寺住職・棲悟宝嶽大師が、この岩峰より旭光が生まれ一日が始まる感応を得た事から黎明岩と命名したと説明書には有る。

幕岩を廻り込んで鎖で登りあげると幕岩の上は意外に広く南側に緩く傾斜するテーブル状だ。しかし取り敢えずゴルジュを登り切った訳で先へ行くには登り切った岩から左側の岩に移らなければならない。其処を繋ぐ幅80㎝位、長さ1m強の渡り岩は角・5㎝位で辛うじて支えられている自然の石橋だ。雄さんは難なく渡って行ったが、この石橋も岩と同様、傾いており下は今、登って来た鎖場 足がムズムズして私にはとても渡れない。 仕方がないので鎖場とは反対側に1mほど降りて、そこから腕力で身体を引き上げ向かいの岩に移った。

この岩の幅は人一人が座れる程度、先端は船の穂先の様に狭まっている。私も岩の上に立ったが高度感が凄まじく長居は無用の岩だった。

小楢山山頂に戻り先ほどの高揚した気持ちを静め昼食・・・『私、未だ興奮が治まらない顔をしてますね』 この時には厚い雲が空を覆い、あれほど良く見えていた山々は何処にもなく私達が「富士山だ」「北岳だ」と興奮しながら見ていた場所には老夫婦が塩山市を眺め腰を下ろしていた。

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登る時よりも急坂のススキの斜面をひとしきり下ると今度は入山時に下った分の登りが始まる。何だか今日はとても疲れた。雄さんは前日、長七郎山を登って来た割に元気だ、きっとハナイグチがたくさんゲット出来たせいだろう。木の階段を下っている途中、樹間にお地蔵さんの姿が見え人の気配がした。

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幕岩から写した大展望

小楢山を前景に乾徳山から始まり八ヶ岳、五丈岩を山頂に戴いた金峰山、そして南アルプスの峰々が其々の姿を、クッキリと浮き立たせ目の前に広がっている。ジッと地蔵岳に目を凝らせば天頂を指しているオベリスクが確認され直ぐ後ろに聳えたつ甲斐駒ケ岳の側面には独特の岩壁の摩利支天も手に取る様だ。

中でもやはり北岳は二位の貫録を持って如何にも誇らしそう。そして振り向けば懐かしい大菩薩連嶺が有り、その右下、塩山市が広がる雲上に一際高く富士山が浮かんでいた。

コメント (20)
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