続きです
昨夜の事
20時になると消灯され今迄のざわめきがシーンと静まり返ったのも束の間
オナラの音から始まり激しい鼾 その内、耳元で単発的な鼾
私も鼾を掻くらしいから(名誉の為に可愛い鼾(^_-)-☆)文句は言えないが
それにしても他人の鼾は気になるものだ 「タカも負けるな」と雄さんが言う
どうにも寝られそうにないので雄さんを伴って外へ出て見ると広大な夜空に星が澄んだ光を
放ち瞬いていたが期待した「降る様な」には届かなかった
「家で見る星空と其れほど変わりないな」と雄さん
部屋に戻り布団に潜ると今度はインターホーンから洩れるシャカシャカ音が直ぐ上から
雄さんも1時間程は我慢していたが限界が来たのか「ラジオ停めて下さい」
しかし寝てしまったらしく、それからもズッと鳴りっぱなしだった
暫くすると外から帰った男性が「満天の星ですよ、人工衛星も見えました」
とうとう我慢できなくなってしまった雄さんは布団を持って廊下へと・・・
後で聞いた話では雄さんの他にも何人かが廊下に居た訳だが
その内の一人の鼾が物凄く踏んだり蹴ったりだったそうだ
その夜は疲れているのに、まどろむ位しか出来ず、おまけに3時前から他の部屋の
団体が動きだしたため寝ていられる状態ではなくなってしまった
こうなったら行動を起こしてしまった方が楽と身支度をし御前峰へ向かう事にした
山腹には点々と懐中電灯の灯り、東の上空には金星、左下方には小松の市街地の灯りが
一塊となり輝いている 白山比咩神社から太鼓の音が鳴り山々に響いた
懐中電灯の灯りが一列になって登って来る
闇が少しずつ薄まってゆき東の空が、ほんのり染まり始めた
地上と天上の境界と言う急峻な岩壁を登りあげると高天原
瞬間パッと視界が開け雲海の上に北アルプスの雄大な山並みが横一直線に並び
その中に小さな尖峰を見つけ私は「槍ケ岳」が見えると叫んだ
黒い山のシルエットが日の出と共に次第に輝きを増し山肌が浮かび上がる
瞬間、山々が大きく息を吸い込んだ様に思えた
ー(略)-
御前峰から尾根伝いに進み天柱石からジグザグ道を下ると間もなく火口底に降り立った
火口底を暫く歩くと御前峰・剣ヶ峰・大汝峰に囲まれた翠ヶ池の畔に出た
折からの風の強さに湖面は風にあおられ時折り水しぶきが飛んでくる
翠ヶ池を過ぎ御前峰からの尾根を乗っ越すと、いよいよ大汝峰の登りとなった
岩また岩の斜面に吹き付ける風は私達の全身を阻むかのようだ
山頂(2684m)の風当たりは更に厳しく足を踏ん張って立っているのがヤッとだった
(写真の山は大汝峰より)
ー(略)-
火口の底に下り道標に従って血の池、五色池、百姓池、残雪の下に隠れている千蛇ヶ池の
縁を歩く頃には風も遮られ漸く一息つけるようになった
この千蛇ヶ池が解氷して地底の一部が露出するのは新雪が来る前の
10月上旬の僅かな期間だけだそうである
言い伝えが面白い 泰澄大師は白山開山に際し山頂近くに居た毒蛇千匹を捉え、この池に
封じ込め万年雪を持って蓋をしたと言う 万が一にも雪が消えて蛇が逃げ出そうになれば
池のすぐ上にある岩峰「お宝庫」が崩壊し池の蓋をする様になっているのだという
白山には昔から毒蛇が多く居たらしい 今でも沢筋から登るルートに温泉が出ている
所がありキャンプしていて蛇に驚かされた人がいるというのだとか
この後、私達はお花畑を経由して7時、室堂に帰り着いた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
砂防新道と観光新道の分岐まで下れば一昨日、私達が挨拶に返す気力も無く登ってきた
斜面を同じ様に登山者が登って来る、きつそうな顔 私達は無言で擦違う事にした
此処を下ると、もう室堂の赤い屋根も御前峰も見えない
何処からかウソのフィーフィーと言う鳴き声とウグイスの鳴き声が聞こえてきた
蛇塚
(私達の山行に珍しく花の写真)
キヌガサソウ・シナノキンバイ・ミヤマキンポウゲ
たくさんの花に飾られた斜面をアルバイトの学生と花名を教えたり教わったりしながら
ノンビリ道草を食いながら歩いている内に前方に殿が池ヒュッテが見えてきた
ー(略)-
テント一張りは出来そうな空間でリュックを下ろし靴を脱ぎ、いよいよ終わる山旅の
厳しくも楽しかった時を振り返り熱いコーヒーを啜った
ここから眺める四方の景色は何とも素晴らしい
今、下りてきた花咲く斜面、東側に一際目立つ別山、南対岸には昨日、汗を掻きかき登った
砂防新道、甚之助小屋も小さく見える そして右に目を移せば別当覗きから覗いた
大崩壊の巨大な傷痕、西には殿が池ヒュッテの後ろに聳える白山釈迦ヶ岳
そして私達が坐る三畳ほどの回りにはニッコウキスゲの大群落
水溜りの様な殿が池を通りトンネル状の岩を抜けると視界もいよいよ閉ざされ、ひたすら
無風の熱い下りとなった、道脇のササユリだけが涼しそうだ
所々土止めの木製階段があり次第にペースダウンして来る、進むにつれて更に緊張の
連続となり何時もの様に駆け下る事が出来ない
もういい加減にして欲しいと思いながら、ひたすら下って行くと後ろから
元気の良い子供五名と女性一人が追いついた
「足がイテェ~~階段は嫌いだ~」と言いながらも飛び跳ねている
この先、別当出合までの道程は長かったが子供達の元気さに引きずられて
1時20分、漸く下り着く事が出来た 君達のお蔭で気晴らしができて無事降りられた
有難うと礼を言いバスに乗り込むと昨日の金沢のご夫婦も同乗し
一時でも言葉を交わし合った仲、一ノ瀬で軽い寂しさを残した別れた
入山時、あれ程あった車も愛車のミューがポツンと帰りを待っているだけだった
本日はコメント欄を閉じさせて頂きました
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