新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

3月14日 その2 先が読めない時が来た

2020-03-14 16:02:25 | コラム
トランプ大統領が本格的にCOVID-19対策に出たので:

この見出しは、先の見通しが立たない事態の原因の一つに過ぎないかも知れないが、良くない方向に進んでいることだけは読める気がする。トランプ大統領が執務室から滅多に見せない深刻な表情でヨーロッパからの入国制限を発表したかと思えば、安倍総理に電話して予定時間を超過して50分も会談したと報じられた。藪中元外務次官は「会談中には公開しても良いこと良くないことは取り決めてあるはず」と言われたが、報道された限りでは当たり障りがないことだった。

かと思えば、矢継ぎ早に矢張り厳しい表情でスタッフを引き連れて”National Emergency“(「非常事態宣言」と「国家非常事態宣言」と2種の訳があった)を宣言された。確か藪中氏だったと思うが「これも選挙対策の一環である。トランプ氏は株価を高く維持することを重視しておられるので、乱高下している相場の梃子入れをも狙われた」と解説されたが、その通りでNYのDJIは大きく反発した。だが、果たしてトランプ大統領は選挙対策だけで Emergency を宣言されたのだろうか。私如きには読めないが、アメリカにおけるCOVID-19の蔓延の状態は確かに良くない。

新型コロナウイルスの感染の蔓延は、テドロス事務局長によれば、中国を除けばと台湾を無視すれば、誠に良くない事態となっている。私は敢えてトランプ大統領は先手を打って来られたと見ている。この辺りは、既に採り上げたYM氏が唱える「最初は大きく広範囲に出ておいて、後から縮小する(帰納的にする)手法を採られたのだろうと解釈している。更に後難を恐れずに言えば「これまでの楽観的な姿勢では済む事態ではない」と、甘さを排されたのであろうか。アメリカ大統領としては、この方があるべき姿だと思う。

一方の我が国では、遅ればせながら予定通りに新型インフルエンザ等対策特別措置法改正が、13日(金)という曰く付きの如き日に成立した。西村康稔担当大臣はPrime Newsに登場されて、野党とマスコミ連合が懸念してみせるような緊急事態宣言や私権の制限のようなことはしないと懸命に言っておられた。そこに、安倍総理が14日の夜に記者会見をされるとの発表があった。トランプ大統領が続々と打ち出されたことと、電話会談の後ではタイミングが良すぎる印象は拭えない。言いたいことは「まさか総理は緊急事態宣言で先手を打つお考えか」なのだ。読み切れない。

次はオリンピックだ。中止か延期か等々の議論と憶測が飛び交っている状態だ。先日は「外堀が埋められた感あり」と言ったが、トランプ大統領の非常事態宣言が出てきたのでは事態は一層先が読めない所に来てしまったと思う。そこに、最終の決定権を持つと春日良一氏が繰り返し力説するIOCのバッハ会長が、既に指摘したように「WHOの勧告(「助言」とした報道もあった)に従う」と述べた。ということは、バッハ会長は”advice“と言ったのかと思うが、分かりやすく「アドバイス」で良かった。これでは、読みやすいようで、やるのかやらないのか読みにくい状況になったと思う。

オリンピックに関して私が懸念するところは、先ず繰り返して指摘したことで「感染がこれからかも知れないヨーロッパやアフリカや南アメリカ等から7月になって選手団を出せるのか」がある。次は「危ない国から来た選手団を我が国が如何なる基準で受け入れるのか」だが、ダイアモンドぷりセンス号の先例を思う時に、多くの国の選手団が同じ「オリンピックビレッジ」に入居して何日も過ごしたいと思うか」という点だ。ということは、7月下旬までに少なくと我が国がウイルスを制圧出来ていなければなるまい。だから緊急事態宣言になるのか。読み切れない。

オリンピックの話題から離れよう。私が個人的に恐れていることは「リーマンショック以上の不況が全世界を襲うのではないか」という事態だ。既に何人もの専門家やエコノミストたちが予告していることで生易しい問題ではない。現在までに世界の各国に生じている悪材料を、私がここで述べる必要はあるまい。それだけでも十分に大不況の前兆なのに、本格的な状態が何時やってくるかは誰でも読めるようだが、何処まで悪化して行くかは読めないのではないのか。

再びオリンピックの関連に戻れば、中止でも延期でも我が国に生じる経済的な損失は大きすぎる。中止だと7兆円だという試算を見た気もする。私はそれくらいで収まれば良いのだがと思っている。そこには、かなりな数の失業者が出てくることは間違いないと思う。だが、何万人なのか何十万人かなどは読めない。何方かが言っておられたが「リーマンショックに対しては経済的に手が打てたが、新型コロナウイルスは見えない敵なので打つべき手が読み切れない」と。大変な時が来るだろう事は私にも読めるのだ。安倍さん、お願いしますよ。


印刷媒体向けの紙の需要の低迷を嘆く

2020-03-14 11:52:01 | コラム
ICT化の進展と普及を恨んでも遅いか:

先日は19年度の新聞用紙の生産量が242万2,000トンと前年対比△6.6%だったことを採り上げた。そこに追い打ちかけるような19年度の紙・板垣の輸入統計も発表された。その中で悲しいほど目立ったのが、新聞用紙の輸入量だった。嘗てはミルクカートン原紙、中質コート紙(日本語版NEWSWEEKの本文のような紙)と共に、私が「輸入紙の3大品種」と呼んでいた新聞用紙の輸入量は何と1,586トンで、対前年比△65.0%を記録していた。この背景には日本製紙とウエアーハウザーの合弁企業だったノーパック社が新聞用紙の輸出を停止したことも挙げられるが。


そこで、新聞そのものの発行部数を見てみよう。日本新聞協会の発表では、19年の日刊新聞の発行部数は3,780万部と、対前年比△5.3%となっていた。この部数は97年の最高記録と較べれば△28.6%という大幅な減少だった。私は以前に「この間の新聞用紙の生産量が△29%であり、アメリカの60%と対比すれば未だ穏やかなものである。だが、何れはアメリカの後を追っていくことになるのでは」と述べたが、29%のマイナス成長の幅は符合していた。

新聞用紙の需要の減少は顕著だが、同じ印刷媒体向けの紙である印刷・情報用紙は、前年対比△4.0%と未だ未だ穏やかな状態に止まっている。私はこの分野の需要が何時まで持ち堪えられるのかと、ICT化の影響の凄まじさを今更ながら恐怖であると看做していると同時に、恨みたい思いにとらわれている今日この頃である。