Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『野生哲学 アメリカ・インディアンに学ぶ』

2013-05-24 01:32:52 | 読書。
読書。
『野生哲学 アメリカ・インディアンに学ぶ』 菅啓次郎 小池桂一
を読んだ。

前半部というか、190pくらいまでは菅啓次郎さんの書きもので、
残りの40pくらいが小池さんによるナバホ族の神話を描いた漫画です。

本書を読んでいると、人間というものは機械じゃない、
熊や蜂や猫と同じ生き物なのだから、
自然の中で生きるのがすごく厳しいことだとしても、
地球を俯瞰する視座でみてみたら、自然の中での生活が一番適当なのではないかと思えてきました。
町や村も含めて、現在の人間の暮らしというのは、
自分で農耕や採集や狩猟をしない都市型(市場経済型)の生き方をしている。
それって、僕の言葉でいえば、
人間が自身のために作った温室のようなシステムにひきこもって
生きているようなものかもしれないです。
温室にこもって、自然と対立する立場をとるのが、今の先進国の人たち。
もっといえば欧州型の考えに席巻された人たちのとる立場。
温室には温室の利点がありますが、そういった生活によって失われる、
人間の野生性というものがあります。

アメリカの広大な土地に住む、いくつものインディアンの部族たちに
伝わる神話や伝承、そしてそれらに基づく生活、生き方の哲学、世界観。
土地に密着し、土地に溶け込むからこそ生まれる、
土地と人間が食い違いを起こさないような考え方に満ちているように思えました。
本当に、インディアンの人たちは、自然をリスペクトしているし、
自然を損なってまで利益を得ようとするような、
欲の皮の突っ張った考え方をしない人たちだと思います
(そういう人たちが多いと思う)。
それでも、部族の儀式は読んでいるだけで痛く感じるくらいですし、
その部族に生まれたかったとは思えません。
仏教の苦行のようなものがそこにはあるようです。
また、太陽を特別視するところなどは、
古代エジプトに通じるものがあります。
そのあたり、人類学の知識のある人は比較してみたら面白いのではないでしょうか。

最後に。
書きもの担当の菅さんは詩人でもあるということで、文章がやはり
そういう趣のあるものでした。かといって、論理がないというわけではなく、
逆に論理の整合性をしっかり精査して書いているようなところもあります。
しかし、後半部になるにつれてそういった趣のある「味」は薄まっていって、
説明文的な文章の「味」が強くなっていったように感じました。
まぁ、僕が疲れたためにそう感じたのかもしれない。

まとめると、自然と対立していくようなライフスタイルは
僕もあまり好まないかな、ということです。
そして、10代の頃ならば「遅れてるな」と笑い飛ばしたに違いない、
アニミズム的な価値観(動物、植物、鉱物、星々などすべてに魂があるという考え)に
ついてすら、その感性にYESを言いたい、ということです。

話は変わりますが、黒人大統領が誕生したアメリカに、
いつかインディアンの大統領が誕生しませんかねぇ。
そういう日が来たら面白いと思います。
それも、アメリカの大量消費、自然との対立の価値観に毒されていない、
インディアンらしい人物がなったらいいな、なんて思ったりもしました。



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