Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『新装版 コインロッカー・ベイビーズ』

2014-03-14 23:48:48 | 読書。
読書。
『新装版 コインロッカー・ベイビーズ』 村上龍
を読んだ。

この作品が発表されたのは1980年とのことですが、
今もってまったく力を失っておらず、
80年代が舞台でも古めかしさを感じさせない、
言葉通りの「現代の文学」でした。

これでもかという数の、
明細な名詞に形作られた一文一文の情報量の多さ、
そしてそれらが無駄なく読者に想起させる場面や状況、
この濃厚さがこの小説、ひいては村上龍文学の一つの特徴です。
そしてタブーなど無いとばかりに垣根無く、
歯に衣着せぬ描写がページ上にほとばしります。
縦横無尽でありながら細やかな神経で緻密に言葉を積み重ねているという、
さすが、と言ってしまうほどのすごい仕事です。

僕は結構、小説やらエッセイやら、ものによっては論説文を読むときにも、
その筆者に乗りうつるように読んだりします。
ここでこういう言葉が出る、展開する、というのを読者でありながら
追体験する感覚です。
そうやって磨かれる自分の感性や感覚や思考というものは確かにあるんです。
それで、この村上龍さんにもそうしようとすると、
莫大な情報量、つまりその深遠さと広大さにクラクラしてしまう。
それで、内容もエグかったりして慣れるのに大変だ、というのがあります。
読むのをやめようかな、と思うくらいに、
何かしらの不安定さを心に生じさせられるかのような、
異物感を感じてそれを頭の中にいれたくないという防御反応が起こるような、
そんな気分になりました。
それを、だましだまし、ちびちびと序盤は読み進めることによって、
慣れてきて、一気に150ページだとか読むようになるんですが、
そうやって読むことで、頭が底から混ぜっ返される感覚になりました。
これはたぶん良い事です。
頭の底に積もっていた成分も撹拌されてフレッシュになる感覚でした。

さて、どんな話かというと、
キクとハシという、コインロッカーから発見された赤ん坊が主人公で、
彼らが孤児院で育ち、養子に出されて・・・というように進んでいきます。
二人とも生まれて間もなくコインロッカーに捨てられたためなのか、
自閉的な性質があり、それを打ち消すためになされた治療が、
彼らが生きていく中で、それとなく、彼らにははっきりわからないまま
テーマになってしまう。そして、ドラマチックに展開する彼らの人生、
それは簡単なものではないのですが・・・どうなるのか、という。

それにしても、この作品を読んで思いましたが、
これほど今のサブカル的なアニメにマッチングしそうに感じた
村上龍作品はないです。
きっと18禁になりそうですが、アニメ化すると面白そうです。
それまでの、天才バカボンとか、ドラえもん、とか、巨人の星とか、
そういったものから、攻殻機動隊とか、AKIRAとか、エヴァンゲリオンとか、
そういう質のものに変化していくきっかけとしての一翼を、
この『コインロッカー・ベイビーズ』は担っていたんじゃないかと、
考えてしまうほどでした。

解説を金原ひとみさんがお書きになっています。
彼女の云うとおり、日々、よくわからない罪悪感を感じる人、
嘘偽りの世界のように世の中が感じられる人には、
パワーを与える小説かもしれないです。
ちょっと、疲れるけれども。

これでもかという数の、明細な名詞に形作られた一文一文の情報量の多さ、そしてそれらが無駄なく読者に想起させる場面や状況、この濃厚さがこの小説、ひいては村上龍文学の一つの特徴です。そしてタブーなど無いとばかりに垣根無く、歯に衣着せぬ描写がページ上にほとばしります。縦横無尽でありながら細やかな神経で緻密に言葉を積み重ねているという、さすが、と言ってしまうほどのすごい仕事です。それにしても、この作品を読んで思いましたが、これほど今のサブカル的なアニメにマッチングしそうに感じた村上龍作品はないです。きっと18禁になりそうですが、アニメ化すると面白そうです。それまでの、天才バカボンとか、ドラえもん、とか、巨人の星とか、そういったものから、攻殻機動隊とか、AKIRAとか、エヴァンゲリオンとか、そういう質のものに変化していくきっかけとしての一翼を、この『コインロッカー・ベイビーズ』は担っていたんじゃないかと、考えてしまうほどでした。
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