Fish On The Boat

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『社会の真実の見つけかた』

2015-06-14 22:41:14 | 読書。
読書。
『社会の真実の見つけかた』 堤未果
を読んだ。

岩波ジュニア新書です。
アメリカ社会の現在を見ていきながら、
その背景や原因を探って白日のもとにさらす内容。
アメリカ社会も極まっているなという印象。
そして、そういったアメリカ社会の問題点を、
因数分解するように解いていく過程を示すことで、
読み手であるぼくら自身が、
真実を見つけていくやりかたとはどういうものかを、
読みながら学んでいくような体裁でした。

この本を読んで現代アメリカ社会通になる中学生だとかいるだろうけど、
それもおもしろい存在だなと思う。
学級会なんかで「たとえばアメリカなんかじゃ・・・」って
うんちくをたれていい気になるのも、
オトナになれば(いい意味で恥ずかしい)思い出になる。

それはそれとして。
日本で、のほほんと暮らしているからか、
アメリカの実情をこの本を通して耳にするとすごく世知辛く感じる。
競争原理バリバリで傲岸不遜な政治のように見えるし。
大量破壊兵器もなかったイラク戦争への突入の仕方だとか、
9.11から対テロ戦争へと傾いていったそのやり方、
「愛国者法」や「落ちこぼれゼロ法(経済徴兵制度成立法とも言える)」
を成立させていった過程をしるにつけ、
そんなだから、例えばウィキリークスって、
そういうのに対抗するのにバランスとしてちょうどよかったんだろうなあ、
日本じゃ受け入れられない手合いのものだったとしても、と思ったりする。

日本はまだほんわかしているところがあるから、
ウィキリークスみたいなのはやりすぎでけしからんということになるけれど、
アメリカだとかにすれば世知辛さの真剣勝負だから、
真剣に両足を不正に突っ込んでやってたりするわけで、
つまりはそういうののカウンターとして、ウィキリークスくらいの過激さっていうのは、
「当然」と言った体で出現したものなのかもしれない。
といいつつ、本書を読む進めると、反体制だとかそういったものに限らず、
情報のあり方までを変えて見せたのがウィキリークスなんじゃないか、と
著者は述べているのだけれど。

最終章の「社会は変えられる」はとくに秀逸でした。
この章を読むと、高齢者による巨大な団体であるAARPのことなど
面白いポジティブな情報が得られるし、なにより希望のある章でした。
若者は熱しやすく冷めやすい、それがウィークポイントだ、もっと粘れ、
といろいろと政治に働きかけて社会を少しずつ変えてきた高齢者のひとりは言います。
投票してそれで終わり、では変わらないことだし、
ちょっと駄目だったからといってそこから離れるのはナイーヴすぎるのかもしれない。
アメリカならば、自分たちの抱える学生ローンの問題や就職難の問題などなど、
それら生活に根差した問題を政治にぶつけて働きかけていくことが、
きっと、政府などの政治の暴走を防ぐことになるのでしょう。
弱い立場の国民は、でも、「数」でもって戦えると著者は言います。
そしてそれは、真実でありましょう。


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