Fish On The Boat

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『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』

2015-06-22 20:21:36 | 読書。
読書。
『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』 アダム・グラント 楠木健 監訳
を読んだ。

人は3つのタイプに分けられるようです。
ギバー(GIVER:惜しみなく与える人)、
テイカー(TAKER:自分の利益を真っ先に優先させる人)、
マッチャー(MATCHER:損得のつり合いを考える人)。

そして、そのどのタイプがもっとも損をするのか。
きっと、想像通りだと思いますが、ギバーなんです。
では、もっとも得をする人はどのタイプか。
それもギバーなんです。
前者のギバーに対し、後者のギバーはどう違うのか。
後者のタイプの成功するギバーに焦点を当てて、
テイカーやマッチャーと比較をしたりなどし、
ギバーという存在がどれほど自分も他者も幸せにするかを
論理立て説明してくれるのが本書。

論理の飛躍も、まどろっこしいところも全くなくて、
丁寧に、つぶさにわかりやすく例をひきながら
説明してくれる良書でした。

与える人、なんていうと、
テイカーたちに骨の髄まで搾取されて燃え尽きてしまうのではないか、
せいぜい、マッチャーまでの生き方しか現実的ではないのではないか、
そういう考えが浮かぶ人も多いでしょうが、
本書では、そうやって搾取されないギバーになるための方策も
かなりのページを割いて教えてくれています。
失敗するギバーにならないように知恵を授けてくれるんです。

それと、本書の最後の方にも書かれていますが、
ギバー、テイカー、マッチャーのどれか一つの生き方で
すべての方面で生きている人はいないということなんです。
ギバーとしての顔も、時折ある人には見せるけれど本性はテイカーだとか、
ギバーが本性なんだけれど、相手によってはマッチャーだとか、
いろいろ時と場合によって変化するようです。

個人的なことを書くと、ぼくが最初に就職した先の上司がどうやらテイカーで、
最後に働いた先では、後からやってきていろいろうるさくて、
そのうち持ち場を牛耳り始めた経験のある再雇用者がテイカーでした。
ぼくはギバーなのですが(こないだやった性格診断でも利他主義者とでました)
どうやら彼らにいいように搾取されて、燃え尽きてしまったタイプなんですよね。
(そうはいいながらも、ぼくも随分と甘さは解消されてきてはいるんです)。
本書では、一番成功に遠いタイプが、この燃え尽きタイプのギバーだとされています。
彼らというか、ぼくらがどうやって燃え尽きないようなギバーになるかについても、
さっきも言いましたが、十分にその方法が書かれています。
おまけに言うと、ぼくの親父も家族に自己犠牲を強いるようなテイカーの性格をよく見せます。
なので、親父が定年退職した今、家に居てもけっこう大変なんですけどね…。

さてさて。
この本はほんとうに多くの人に手に取って貰いたいくらい、
個人の幸福に限らず、社会の幸福の実現にも関係するような内容です。
ブラック企業やブラックバイト、
そしてそれを甘んじてしまう人びと。
そして、そんなブラック企業すら排除できないような、
つまりブラック企業にも頼ってしまっている社会構造を変革させるための、
ひとりひとりの意識の変化をもたらしてくれそうな論旨なんです。
この本に書かれているようなギバーの生き方のほうが、
多くの人にとって幸せや充実感をもたらすでしょう。

そして、常々、生きづらさに関係する最後の砦は「しがらみ」だと考えていましたが、
どうやら、法の整備や道徳教育などに頼らずとも、
このギバーの生き方で解消されるようにも思えてきました。
というか、道徳教育をするならば、
このギバーを分析した内容を教えてあげればいいです。

人びとが互いに温かみを感じる社会で、
さらにギバーとしてふるまったなら。
そういう社会を想像すると楽しくなります。

最後に、本書から抜粋の一言。

_____________


知能が高ければ高いほど、相手の成功に手を貸すようになる。

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