Fish On The Boat

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『愛国者の憂鬱』

2015-08-05 21:50:50 | 読書。
読書。
『愛国者の憂鬱』 坂本龍一 鈴木邦男
を読んだ。

音楽家で、その発言などから「左」寄りかなと見受けられる坂本龍一さんと、
右翼の大物・鈴木邦男さんの対談本です。

ぼくは鈴木邦男さんという人を知らなかったですが、
本書のあまたの発言から、教養があり自分の言葉があり、
激しい感情に流されたりせずに、
冷静に、理知的に考えることのできる人だという印象を持ちました。

一方の坂本龍一さんも、話し相手を得たりといった体で、
いつも以上に普段着に感じられる深みのある博識さと、
聡明な思考のありさまをみせてくれる。

坂本さんは高校生の時に学生運動をやってたこともある人なので、
右翼の鈴木さんとは、必然的に左翼や右翼の話題になるのがおおかったです。
その他、鈴木さんの興味に応えるかたちで、
坂本さんは音楽の起源についてや、アラブ音楽に関する雑学話や、
自身が出演された『ラストエンペラー』の撮影秘話などを話している。

途中、各々の若いころのルーツをしるにつけ、そのめちゃくちゃさに
なんともコイツらけしからんやつらだ、なんて思ってしまった。
でも、若い時なんてそんなもんなんですよね、多くの人が。
そういうところを隠したり否定しつくしたりせずに、
受け入れて今ってものがあるっていう感覚が良かった。

また、「個」というものが大事だと両者は主張されていて、
それはたとえば最近だと、ぼくも嫌いじゃない考えですが、
自分ってものを失くしてしまえっていうのがありますが、
その逆なんですよ。
確かに、ぼくも、自分を失くしてしまったら操られてしまう危険性について、
このブログかツイッターかに書いたことがあるような気がするんですが、
そこがポイントなんです。
人が一人独立していくことで国も独立していくっていうような、
福沢諭吉の言葉を引用して述べてもいて、
国力を強くする気ならば、「個」を強くしていこうという、
提唱とまでいかないですが、提案みたいなものがありました。

それと、軍備に関しても、このあいだ安保の改正がありましたが、
それ以前の対談である本書の両者の発言から、するどい批判が述べられています。
そうなんですよね、もしも中国が攻めてくるならば、
2011年の東日本大震災の混乱に乗じて攻めてきたはずで、
安保の改正で自衛隊が戦闘に使われる範囲が広がりましたが、
それっていたずらに東アジアの緊張を高めているかもしれない。
加えて、そうやって軍備をしなければいけないっていうことは、
外交がうまくいっていないことの裏返しなので、
そこについて重点的に安倍首相を批判するべきなんです。

と、なかなか熱くなる話もあっておもしろかった。
坂本さんは昨日だったかな、
癌の治療で休業されていたお仕事に復帰されるという発表がありました。
お元気になられてうれしいかぎり。
それでも、まだ慎重になさってほしいなぁと願うところです。


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