Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『墨攻』

2015-08-20 00:38:03 | 読書。
読書。
『墨攻』 酒見賢一
を読んだ。

古代中国でおおきな勢力をふるったことがありながら、
秦による中国統一のころには忽然と姿を消し、
それから清朝のころに再発見されたという、
墨家集団をあつかった物語。

墨家は、キリスト教なみに博愛の精神を説く
当時としては過激な思想をもち、
非戦の考えでありながらも、墨守という言葉があるように、
いくさで攻められた城を守る技術や戦術を磨いてきた
ひとたちだそうなんです。
いささかフィクションが混じってもいるかもしれませんが。

中国の春秋戦国時代の趙国が小国の梁国を攻めるのですが、
その防衛に派遣されたのが、たった一人の墨家の人物である革離(かくり)。
はたして、趙の軍勢を退けられるのか否か、
どう革離は防御していくのかがみどころです。

酒見さんの作品はあの『後宮小説』以来二つ目で、
デビュー作と二作目のを読んだことになりますが、
二作目にしてガツンと本格化したかのような、
しっかりとした作品になっていた。
ほぼ空想の産物のストーリーだけれど、ぐいぐい読ませる。

和田竜さんの『のぼうの城』がおもしろかったという人ならば、
古代中国が舞台ではあるけれども『墨攻』も楽しめるでしょう。
そして、難しい漢字がよくでてくるけれど、不思議と読みやすいです。

あとがきを読むと、やっぱり小説家らしく頭をよく使い、
さらに頭の良い人なのかなという印象を受けました。
酒見さんといえば、この『墨攻』と『後宮小説』なのだけれども、
他の作品にも手を出そうかなと、そんな気すらしてくるおもしろさでした。


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