Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『売り方は類人猿が知っている』

2015-08-12 00:00:10 | 読書。
読書。
『売り方は類人猿が知っている』 ルディー和子
を読んだ。

ビジネス書のようであって、なかなかどうして人間学のような本。

論理的に物事を判断して、買うか買わないかを決めているのが
われわれ人間である----というのは間違いであることをつぶさに見ていって、
解き明かしてくれます。

同じワインを飲んでも、値段が高いのだときかされれば、
そっちのほうがおいしいと感じるのが人というもの、
といったポピュラーな心理学実験の話もあれば、
嫉妬や妬みが類人猿に発生した段階で、それを解消しようと
平等や公平の考え方、すなわち民主主義の考えが生まれた
という深い論考の話もありました。

主に海外の行動経済学、神経学、進化心理学で発表された
知見をもとにして、それをしっかりと理解している著者が
自分の言葉で編んだ文章でもっておもしろくわかりやすく
伝えてくれます。

なぜ、現代日本人はセックスから遠ざかるのか。
草食系と言われる男たちはどうしてそうなのか。
そういった問いにも答えてくれているばかりか、
性の意識に対する「なぜ?」に割いているページも
なかなか多かったですね。

ポイントはやはり、人間と言ったって、
狩猟採集時代を経て農耕を始めても1万年くらいしか経っていなくて、
それまでの400万年だとかの類人猿の歴史と習慣と生き方が
人間の脳の基本をなしているのだ、というところでしょう。
生存のために、直感的(ヒューリスティック)に判断をしなければならなかった、だとか、
「欲張り」は健全な衝動である、なぜなら食いだめなどをして生存の可能性を高めるから、
など現代人に残るそのなごりの説明が的を射ています。

ぼくは本書を読んで、
進化心理学や行動経済学に興味を持ちました。
とても引き込まれますし、
こういう学問を名も知らずに待望していたようにさえ思います。
高校生だとか大学生だとか、きっと読んでみるとおもしろいですよ。
「不合理な人間」っていうものがだんだんあからさまになっていきます。


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