Fish On The Boat

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『ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』

2018-12-02 00:16:09 | 読書。
読書。
『ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』 リード・ホフマン ベン・カスノーカ&クリス・イェ 篠田真貴子 監訳 倉田幸信 訳
を読んだ。

終身雇用の時代が終わった現代の、
企業と労働者の関係のあり方を提案する本です。
シリコンバレーを例にとり、
アライアンス(直訳で「提携」の意)という関係を提唱しています。
著者は、イーロン・マスクやピーター・ティールなど
ペイパル・マフィアと呼ばれる一人のリード・ホフマン。

終身雇用が終わった現代、
人はキャリアアップを目指し、
ひとつの企業にとどまらず、
転職を繰り返し向上していく働き方が
主流(もしくは今後の主流)となっていっている。
少なくとも、アメリカのシリコンバレーではそう。

そこでは、会社と労働者がウィンウィン、
つまり互恵的な関係を持つようになっている。
会社は労働者に変革(小さなものも含めて)を起こしてくれることを期待し、
労働者は自らの成長のために会社が手助けをしてくれることを望んでいて、
両者の話し合いによって各々が実現される。

働き方としては、
コミットメント期間という呼び名で紹介されていますが、
短い期間のミッションを担当することになったり、
複数の部署をローテーションで担当して経験を積まさせられたり、
その両者を経て、基盤型の終身雇用的なコミットメントに
ポジションするようになったりという
三つのあり方が述べられていました。
それも、終身雇用が廃れた現代においての、
著者が考えるもっともよいやり方としてですし、
実際にシリコンバレーで行われているものとしてでした。

まず、ここまでをかいつまむと、
つまりは、会社をうまくいかせるためには、
会社も労働者もともに高めあっていく姿勢でいることが大事で、
会社も労働者もお互いにきちんと両者のことを考えあってやっていこうというんです。
よくあるように、会社が労働者へ一方的に「会社に対して尽くせ」というのではなくて、
会社の方も、会社に力を使ってくれるぶん、
あなた個人のキャリアアップのために力を使いましょうということ。
それが、職場をいろいろ変えていきながら生活するスタイルの現代に
もっともふさわしいとの結論なんですね。

さてさて、
中盤からは、「人脈はとても大事」という論説になっていきます。
人脈を開拓せよ、そのための経費は会社が持つようにしていこう、というように。
ただそこで、「人脈」を拡大するとして、
知り合った他人を道具のように思っちゃいけないでしょうね。
本書では、どういう人を知っているかは、
どういうことを知っているかに匹敵するくらい重要だと述べています。
だから、人的ネットワークを構築せよといい、
会社のOBたちとも繋がりを切るなという。

読んでいると、会社第一というか、
会社の役にすごく立つのだから、
そのために人的ネットワークを活かしていこうと読めもするのだけれど、
本当にそのネットワークを維持し良好な関係を結んでいくならば、
人は他人に敬意をもち、かつ大事にしなきゃいけない。
つまり、本書の内容を下で支えているのは、
人を大切にという考えに行き着くと思った。
本書のサブタイトルに、「人と企業が信頼で結ばれる」とあるように、
他人を自分の利益としてとらえるのではなく、
そこも、「信頼で結ばれる」なんだろうということですね。

そうでも考えないとちょっと浅薄です。
広い人脈を持っていると言われれば、
すべてドライな関係なのかなあと想像してしまう。
なかなか他人を思いやりながら多くの人々と繋がるのは難しいですから。
もしくは、調子のいいタイプなのだろうと想像してしまう。
いい顔はするが、自分の身を切らないかなと。

僕みたいな、ビジネスマンじゃない、
比較的内向的で運命的なものの影響も大きかったため
人脈の広くない人に言わせれば
「人脈」という言葉のイメージってそうなります。
「人脈、人脈」と言っている人を見ればそういうタイプばかりだったとも言える。
自分の利益になるかばかりで人を見るのはどうかなと。

だから、本書の内容にそういった補足は必要だったかなと思います。
人脈を拡げ、維持することに大切なのは、
他人への敬意を関係の底に持ち、
あたたかみを失わないことなんじゃないか、ということですね。
ま、でも、親友だとかではなくあくまで「知り合い」という人脈でしょうから、
そこまで力を入れなくてもいいかもしれない。
他人を道具と思わないこと、くらいで。

後半から終わりにかけては、
卒業生ネットワークの構築の仕方など、実践の仕方について書かれています。
そこはやはり「卒業生」なのであって、
トラブって失職しただとか退職しただとかではないわけです。
期間満了、円満退職などの
「卒業生」という前提で述べられている論だと改めてわかります。

どうなんでしょうね、日本に置き換えてみるならば。
人材不足にもなってきていますし、
会社の方でも、労働者に対して以前よりも
いろいろ譲歩するような機運をすこし感じはします。
ただ、こういうキャリアアップしていく労働者人生は、
いわゆるジョブ型の欧米人の王道の労働観だと思います。
日本もそうしていこうという論説モノを読んだこともありますし、
ツイッターを眺めていても、そういう言論を目にしたりもします。
こういった状況で大事なのは、
前向きに仕事経験を重ねたり、
勉強をしたりという自助努力と、
そしてやっぱり人脈拡大なのかなあと思いました。

世知辛さと息苦しさや生きにくさ、
そういったものを生まないように適応していくためには、
本書で示された、こういったちょっと前のめりに進んでいこうとする生き方が
キーポイントになるのかもしれないですね。
万人がそうできるわけではないでしょうから、
もっといろいろな道筋や辿り着ける場所を考えるべきだとは思いました。

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