Fish On The Boat

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『重力とは何か』

2019-11-01 21:04:42 | 読書。
読書。
『重力とは何か』 大栗博司
を読んだ。

重力。
この分野の、内なる雄大さを、
難しい数式などわからなくても感じることができる本でした。
いい意味でざっくりとしていて、
文系の僕(雑誌『ニュートン』でいくらか鍛えてはありますが)でも読めるし、
くわえてこの分野のエキサイティングな空気というか、
帯びている熱みたいなものまで伝染してくるような感じでおもしろかったです。

万有引力を発見した科学者ニュートンのニュートン力学からはじまって、
マクスウェルの電磁気学、相対論などのアインシュタイン理論、
量子力学、そして現代最先端の超弦理論(超ひも理論)へと話は進んでいきます。
そこに貫かれているのは、この宇宙の摂理を知りたい、解き明かしたいという、
科学を考える力に秀でた人々の好奇心と探究心による精一杯の努力の道。

人間が知恵や知識などの力を得ていって、それをどうするか。
その力は薬にも毒にもなりますが、
物理学の歴史の道は、それらを薬として使おうと信じて進んだ道のようにも見えます。
まあ、功名心とか虚栄心とかが原動力になったりもするんですけどね。
そして、またそうやって新たな知恵と知識が作られ、
それらを眼前にした科学者、いや、私たちはそれらをさらに薬として扱えるか。

力を手にしたら、自分だけのために使うか、みんなのために使うか。
僕はみんなのために使う性格の強い道を選んでいると思って日々歩いています。
他者にもそうすすめたいくらい。
粋だろう、なんて思っちゃいもしてですが、
本書に出てくる物理学の道を切り開いてきた頭のいい人たちは、
粋なところがあるよなあ、と一面的にしかしらないですけど、
感じました。

空間の歪ませる力があり、そうやって歪んだ空間の作用が重力と呼ばれる、
みたいな説明があるのですが、はじめて触れた発想で、
とってもおもしろかったですね。
いろんなアイデア、発想が進めてきた分野ですから、
小気味よく「すごいな!」と思える。

なかには、
「ぼくは一生を科学に捧げて、ほんのすこしの成果しかあげられなかった」
なんていう学者もいたでしょう。
「ひとり身でした」だったり、
「家族サービスなんてほとんどできませんでした」だったりするかもしれない。
研究以外の人生の部分では及第点なんて逆立ちしてももらえないような人生があったとして。
でも、そういう人生が、しょうもなさを抱えていながらも、なにか美しい。
そうやって終えた人生、忘れ去られていく人生に、温かみすら感じる。
きっと、何かに向かっていったからなんじゃないか、と
この本には描かれていなかった部分に、そんな文系人間的感想を持つのでした。

よい本です!


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