カミュの「ペスト」2回目を読み終わる。NHK「100分de名著」も2回目を読み終わった。
2回目は物語も解説も内容を理解出来るようになった。もっと解るために3回目にも挑戦する。
さて、同じフランス語を2人がそれぞれ訳しているのを紹介したい。
ペストの物語を記録していた人物を作者が明かす場面である。
この物語のハイライトとも言える。
訳が微妙に違う。原文は持っておらず、ましてやフランス語はわからないので、調べようもないが、
原文に対する訳者の「意志」によって訳文が変わるものだと思った。
新潮社 宮崎嶺雄訳
そのとき医師リウーは、ここで終りを告げるこの物語を書きつづろうと決心したのであった──黙して語らぬ人々の仲間にはいらぬために、これらペストに襲われた人々に有利な証言を行うために、彼らに対して行われた非道と暴虐の、せめて思い出だけでも残しておくために、そして、天災のさなかで教えられること、すなわち人間のなかには軽蔑すべきものよりも賛美すべきもののほうが多くあるということを、ただそうであるとだけいうために。
NHK 中条省平訳
そうして医師リウーは、ここに終わりを迎える物語を書こうと決心したのだった。沈黙する者たちの仲間にならないために、ペストに襲われた人々に有利な証言をおこなうために、せめて彼らになされた不正と暴力の思い出だけでも残すために、そして、ただ単に、災厄のさなかで学んだこと、すなわち、人間のなかには軽蔑すべきものより賞讃すべきもののほうが多い、と語るために。