MOONIE'S TEA ROOM

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『大力のワーニャ』

2014年09月28日 | BOOKS
『大力のワーニャ』(だいりきの わーにゃ)
オトフリート・プロイスラー 作
大塚 勇三 訳
岩波少年文庫
岩波書店


 昨年(2013年)亡くなったオトフリート・プロイスラーの冒険物語です。
 プロイスラーの名作と言えば『大どろぼうホッツェンプロッツ』や『クラバート』などありますが、私はこの作品を一番におススメしたい!
 本当に愉快で痛快。
 『三年寝太郎』のように始まって、『西遊記』の悟空のように怪物や盗賊などをやっつけ、ディズニーの王子様のように困っているお姫様の窮地を救う、これでもかと面白さを詰め込んだドラマティックな物語です。

 さし絵は、堀内誠一氏。
 同じく堀江氏が描いた『ぐるんぱのようちえん』『ふらいぱんじいさん』の絵とはまた違って、冒険物語にふさわしい勢いのある絵が素敵です。

 ワーニャの「どんなことでも、きまっただけの時がかかる。それは変えようがないもんだ。」というセリフは、「助長」の故事を思い出させます。
 子どもがどんなになまけものに見えてもゆっくり見守ること、親として難しいけれど大切なことなのかもしれません。


 原題は「Die Abenteur des starken Wanja」。ドイツ語です。
 ドイツ語だと「W」は英語の「V」の音なので、「ヴァーニャ」になるのかな。でも、「イワン」の愛称は「ワーニャ」ですから、これは「ワーニャ」なんでしょうね。
 「starken」は「強い」という意味。「強いワーニャの冒険」という感じですが、日本語のタイトル「大力(だいりき)」はちょっと昔の物語みたいですね。
 「大力」は「すごい力・またすごい力を持つ人」という意味ですが、今の子どもたちには「怪力」のほうが分かるかな?
 それでも、『怪力ワーニャの冒険』よりも強い印象のタイトルかもしれません。

 そうそう。
 ワーニャのお父さんの名前が「ワシーリ・グリゴーレヴィッチ」なのに、ワーニャは「イワン・ワシリエヴィッチ」だということに驚いた子もいると思うのですが、この「ヴィッチ」のついている姓は家族の苗字(ファミリーネーム)ではなくて「父姓(父称)」というもの。
 「ヴィッチ」は「~の息子の」という意味で、つまり「ワシーリの息子のイワン」と呼んでいるわけです。登場はしないのですが、ワーニャのおじいさんは「グリゴーリ」という名前だと分かりますね。
 敬意をもって人に呼び掛けるときは「名前+父姓」で呼びかけるんだそうです。たしかに、そういう場面で出てきます。
 
<関連サイト>
『大力のワーニャ』岩波少年文庫 編集部便り
父称 - Wikipedia
 父称(父姓)について書かれています。
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