モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

シナノタンポポに酔いしれたかミヤマセセリ(妻女山里山通信)

2010-04-25 | アウトドア・ネイチャーフォト
にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ にほんブログ村 歴史ブログへ 
ブログランキング・にほんブログ村へ

 妻女山の桜吹雪が春の嵐で高く舞い上がるようになると、展望台からは千曲川沿いに派手なピンクの桃の花と黄色の西洋油菜の帯が広がります。鮮やかすぎて、それはどこか浮世離れした風景です。遠く茶臼山の斜面には林檎の白い花も咲き始めました。

 妻女山の桜が終わると、山の花は樹木から草の季節に移ります。林道脇には鮮やかな黄色のシナノタンポポ(信濃蒲公英)が咲き始めました。シナノタンポポは、在来種カントウタンポポの亜種で、ともに染色体数が2倍体なので受粉しないと種子ができません。

 外見上は、写真のように総苞片全体の大きさが太く、外総苞片と内総苞片の先端の小角突起とが全く無く、緑色した外総苞片と内総苞片の色の濃さが薄いなどの特徴があります。妻女山で見られるタンポポの多くはこれなのですが、車が通る林道脇などには四番目のカットにあるような苞片が水平に開いた外来種との雑種も見られます。便利な車は、こんな里山の奥にまで欧米化を運んでしまいます。

 タンポポといえば、学生時代に読んだレイ・ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』(晶文社)を思い出しますが、オリジナルのタンポポ酒というのは飲んだことがありません。ほろ苦い思春期の思い出の味なんでしょうか。タンポポ酒にしろタンポポ茶(タンポポコーヒー)にしろ薬効成分は高いようで、利尿作用があり、不妊症、肝炎などに効くということで、古今東西で飲用されているようです。作り方も色々あるようです。

 そのタンポポに盛んに飛び回って吸密する蝶がいました。タンポポ酒に酔ったのではないでしょうが、吸密に疲れたのか地面にひれ伏して留まりました。セセリチョウ科チャマダラセセリ亜科のミヤマセセリ(深山せせり)です。幼虫の食草はクヌギやナラ類なので、東京では雑木林の減少とともに消えゆく蝶ですが、ここ妻女山では春を告げる蝶の一種としてたくさん見られます。雌は前翅の中央に白い帯があるので、これは雄。忙しなく飛び回っては、タチツボスミレやタンポポで吸密していました。

「蒲公英は 天窓そりけり 更衣(ころもがえ)」
「蒲公英も 天窓剃たる せつく(節句)哉」   小林一茶
 一茶の句は、読んですぐに情景が浮かぶような句が多いのですが、この句はちょっと難解です。天窓剃るとはなんでしょうか。天窓剃って衣替え。天窓剃って端午の節句。天窓は太陽でしょうか。旧暦なら6月5日。衣替えもその頃。タンポポは綿毛になっているものもあります。翁の白髭に例えたのでしょうか。

「蒲公英に 酔いしれて伏す せせり哉」(せせりという漢字は手偏に、王の下に升のノを取ったもの)
 せせり蝶は飛び方もアサギマダラの様に優雅に舞うのではなく、忙しなくパタパタと飛び回ります。吸密した後は、タンポポの蜜に酔ったかのように地面や枯葉の上に翅を広げ、ひれ伏したように留まります。林風
 
★妻女山の真実について、詳しくは、本当の妻女山について研究した私の特集ページ「妻女山の位置と名称について」をご覧ください。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする