6日に最高気温が20度になったために、朝方は蕾だったあんずの花が一斉に開きました。低い集落内はすでに満開で散り始めているものも。夕日山の信濃三十三番札所第六番洗渕山観龍寺近辺も見事に咲き誇っています。観龍寺は、坂上田村麿が東征の際の草創で、茅葺きの屋根が特徴。
あんずの里スケッチパークでは、楊貴妃、平和、ライバルなど色々な種類のあんずの花が楽しめます。アップの写真は、そのスケッチパークで撮影したものです。観光客は、ほとんどが窪山駐車場と上平展望台周辺に集中しますが、穴場は十六世紀のはじめ(清野国俊の頃か)節香徳忠和尚を請し立てたと伝わる禅透院。サンシュユはすでに花の終わりでしたが、杏は満開でした。この寺の裏山にジグザグに登る道があり、そこからの俯瞰は特筆ものです。また、その北にある興正寺の山門の「子持ち龍」は天才・立川和四郎富昌の作。
また、薬師山から俯瞰するのも一興。「花さかり 山は日頃の 朝ほらけ」の芭蕉句碑があります。もう一つは、林道芝平樽滝線の森が眼下に一望できるポイント。そのカットは、MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)の4月9日のフォトルポの3ページ目をご覧下さい。バーズアイビューで見下ろす森のあんずがご覧戴けます。現在が見頃ですが、この週末はその最後のチャンスになると思います。
あんずの里の開花情報は『あんずの里2010情報サイト』で。
前の記事で、楊貴妃は若さと美貌を保つために、全身に杏仁油を塗っていたと書きましたが、杏仁にはシアン化合物が含まれているんです。現在はそれを取り除く技術があるそうですが、楊貴妃の頃はどうしていたのでしょう。シアン化合物は青酸に変化しますから身体に毒です。保湿抗菌清浄作用があるそうなので果実を食べるだけでなく杏仁油も利用したのでしょうが、楊貴妃からはいつも杏仁の香りがしたのでしょうね。楊貴妃の香りは杏仁豆腐か…。
子供の頃、焼酎漬けの杏仁が好きでした。けれども成分が強くアルコールも含まれるので、食べ過ぎると鼻血がでました。現在売られているものは、アーモンドパウダーに香料で杏仁の香りをつけたものがほとんどです。本物の杏仁の成分は、不飽和脂肪酸、たんぱく質、炭水化物、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ポリフェノール、ビタミンB17、ビタミンEと豊富ですが、極微量の青酸成分が咳止めなどの効能がある反面、微量とはいえ毒性分なので過食は禁物です。
ところで、あんずの里へ雨宮から入る際に、倉科との分岐で「富士見橋」を渡るのですが、いつも疑問に思うのです。ここから富士山など拝めるはずがありません。どういう理由での命名なのでしょう。あえていえば、北方に戸隠連峰の高妻山が見えますが、別名を戸隠富士ともいいます。ひょっとすると、それが命名の由来なのでしょうか。不思議です。
あんずの里は、開花期のみ賑わいますが、ぜひ梅雨時の晴れ間、オレンジ色の果実が鈴生りに成っているときに訪れてください。山里中甘酸っぱい杏の果肉の香りが漂っています。それはもうひとつの桃源郷、いや杏源郷の表情(かお)です。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。あんずの写真も[樹木]にたくさんあります。