昨日で、初女さんの写真展が終わりました。
沢山の方が足を運んで下さいました。本当に感謝です。
昨日、ランディさんが日本農業新聞に初女さんのことを書いた
文章がなぜか出て来たのです。
ランディさんは、初女さんから次なる宿題を頂いていました。
少し長くなりますが、その文章を載せさせて頂きたいと思います。
『 ありがとう初女さん
2月1日、弘前に住む「森のイスキア」の佐藤初女さんが
亡くなられました。佐藤さんとの交流を描いた『いのちのエール
初女おかあさんから娘たちへ』を出版したのが、昨年の10月3日
私と初女さんのお誕生日だった。
初女さんとの交流は私が作家としてデビューした頃から始まる。
ずっと母のように慕ってきた方。昨年、1月に弘前でお会いした時
初女さんは私を台所に連れて行き、糠床を出してぬか漬けの
漬け方を教えてくれた。きゅうりを丁寧に切り、ぬか床の糠を
食べさせてくれて、良いぬか床の味を舌で覚えた。
「ぬか床は生物多様性ということだと思うんです」
90歳を過ぎた初女さんから「生物多様性」という難しい言葉が
出た時、これは初女さんの遺言かもしれないと思った。
私はただ、じっと初女さんがきゅうりをぬか床に漬けるのを
見ていた。もう包丁を持つ手先が震えていた。
ぬか床の説明を終えると、初女さんは「以上、終わりです」と
言って頭を下げた。私の父も、私に遺言を伝えたとき、
同じことを言った。それで私は大急ぎで本の執筆に取り掛かった
他の仕事はそっちのけで、初女さんから教えられたことを
綴った。
初女さんが生きているうちに、読んで頂けてよかった。
でも、生物多様性については、十分に答えを見つけていない。
ぬか漬けは、白米ばかり食べて脚気になった江戸庶民を救った
発酵食品。この世に無駄なものは何一つない不思議を感じる。
食のことを考え続けてきた初女さん。
命のつながりをぬか床に見ていたのだろう。
また一つ、初女さんから宿題をもらった。
「生物多様性とぬか床」。この遺言を理解し
誰にでもわかるように伝えていく、それが私の仕事だ
田口 ランディ 「生きてるって幸せ」より 』
あの日の初女さんの台所が、目に浮かんできます。
ぬか漬けを教わるというより、何か神事に立ち合っているような
そんな感じでした。
初女さんの手の震えに、消えゆくいのちの炎を感じ
怖かったことが、今でも心に残っています。
前日、初女さんは「ランディさんに生物多様性のその先を
書いてほしいの」と言われ、ご著書を2冊託されました。
初女さんの言葉は、体験から生まれているので
やさしい言い方なので、すぐにわかった気になりますが
私たちが体験を重ねないと、本当にはわからないことが
多いのです。
ランディさんの宿題も簡単には答が出ない宿題です。
初女さんは、こうやって宿題をみんなに出されていったの
ですね。
すぐには答えの出ない宿題ばかり…
初女さんからの宿題、どんなに難しくても諦めないぞ!