「ヴィーナスの誕生」 サンドロ・ボッティチェリ 15世紀イタリア
今日は詩など発表する予定でしたが、昨日、カバネルやブーグローやアングルが許されるなら…などと書いたので、わからない人もいるかもしれないと思い、今日最初の更新は、「アートの小箱」に入れることにしました。
タイトルはイタリア語で気取ってみましたが、多分、「ラ ナシタ ディ ヴェネーレ」と読むのだと思います。要するに、「ヴィーナスの誕生」。
これはもう、ヴィーナスを描いた最も有名な絵で、だれも知らない人はいないと思います。わたしも好きです。本当に、女神さまそのものだし。
「ヴィーナスの誕生」 アレクサンドル・カバネル 19世紀フランス
個人的にはあまり好きではないんですが、横たわるヴィーナスの要素もあって、なかなかに官能的。でも女神様には見えませんね。普通の女の人の裸の絵を描いて、一応、ベッドの代わりに海を描いて、空にクピドなどをたくさん躍らせて、ヴィーナスにしたという感じです。
海の波の表現なんか、ボッティチェリよりずっとうまいと思うし、技術も進んでるけど。やっぱり、ボッティチェリのほうがきれいだな。
「ヴィーナスの誕生」 ウィリアム・ブーグロー 19世紀フランス
これはもっと好きじゃない。ブーグローは今でも人気はあるみたいで、この絵なんかも、すぐに売れたそうです。でも、なんというかなあ。真珠のように白い肌のヴィーナス。とても上手に描いてあるんだけど、わたしには、これ、とても下手な絵に見えるんです。どんな感じかというと、つまり、ほんとはもっと下手な画家が、うまくなりたくって、魔法使いから魔法の筆を貰って、うまく描けるようにしてもらったという感じ。
ようするに、技術に見合うだけの魂の成長が見えない。一見きれいに見えるんだけど、なんとなく、ヴィーナスを見る周りの人の視線に、痛いものがある。見たくない心が見える。海も、なんだか汚れた浴場みたいに見えて、どことなく、垢っぽく感じる。
なんか、嘘が透いて見えるって感じで、なんというかな、全体的に、きれいじゃない。だから好きじゃない。
「ヴィーナスの誕生」 ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル 18-19世紀フランス
これもあんまり好きじゃない。うまいんですけどね。うまいだけという感じだな。
神話によれば、ヴィーナス(アフロディテ)は、クロノスによって切断されたウラノスの男根が海に落ちて、その精液から生じた泡から生まれたそうです。海の泡から生まれたというのはなんだか美しいけれど、その泡の元が男性の精液だと言われると、要するにヴィーナスは一種の神秘的な性行為によって生まれたわけで、愛欲の女神といわれるのもなんとなくうなずけるところです。
よく言われるところ、ヴィーナスは、人間が女性の裸を描く格好の言い訳として、使われる。裸の女の人を描いて、周りに海や貝やクピドなんかを描けば、ヴィーナスになるというわけで。それがなくても、ただ、ヴィーナスと題すれば、それは芸術であって、許されるわけで。
まあ、そこらへんを、マネのオランピアあたりがぶっ壊したんですけどね。
わたしもそれにならってヴィーナスを描いてみたのですけれど、女性の裸体はやっぱり美しいし、女性でも、見てみたくなるし、描いてもみたくなる。でも、同じ絵でも、やっぱり本当に美しい裸体じゃなければ、いやだな。ジョルジョーネやティツィアーノは美しいですけどね。
カバネル、ブーグロー、アングルは好きじゃない。だって、きれいじゃないもの。
まあ、今日の最初は、その好きじゃない絵を、参考までに、紹介してみました。