前回、天使の絵をたくさん紹介してみたので、今回は美しい女性の絵をたくさん紹介してみたいと思います。冒頭はアントニオ・デル・ポライウォーロ(15世紀、イタリア)の「婦人の肖像」。かわいい女性ですね。髪や首に飾った小さな真珠がよく似合う。良家のお姫様みたいな感じですが、小さな口元と顎がかわいい。貴夫人というより、まだ少女ですね。目元に幼さが見える。でもこれは好きです。とてもきれい。

これは、カミーユ・コロー(19世紀、フランス)の「真珠の女」。真珠みたいに見えますが、髪に飾ってあるのは真珠じゃなくて、葉っぱの飾りです。それが真珠のように見えるので、「真珠の女」と題されたそうなのですが。モデルはコローの家のご近所の十代の娘さんだそうです。ポーズはモナリザからとったのだと思いますが、小さくて丸い目がとてもかわいい。質素な服を着てるけれど、どこか気品を感じます。

ピーテル・パウル・ルーベンス(十七世紀、フランドル)の「麦わら帽子」(シュザンヌ・フールマンの肖像)。モデルのシュザンヌ・フールマンは、ルーベンスの二度目の妻、エレーヌ・フールマンのお姉さんだそうです。「麦わら帽子」というのはこの絵の愛称みたいなものらしいですが、かぶっているのは麦わら帽子ではありません。着てる服もとても上等だし、羽飾りのついたきれいなフェルトの帽子をかぶっている。大きな目がかわいいですね。ルーベンスは、ふくよかで愛らしい女性が好きだったようだ。

これは説明するまでもない。レオナルド・ダ・ヴィンチ(十五-十六世紀、イタリア)の「白テンを抱く貴婦人」。モデルは、ミラノ公ルドヴィーコ・イル・モーロの愛人、チェチーリア・ガッレラーニ。細面に少し薄い唇。まだ少女の瞳。資料では当時十六歳から十七歳だったと言われます。美しいけれど、悲しいな。誰かの愛人として生きることを、どういうふうに感じていたのでしょう。当時の風習では、彼女は彼の妻となることはできない。愛していたのだろうか。レオナルドの目は女性を静謐な光の中に照らしだす。その奥に見える真実を洗い出す。彼が描くと、女性はもう人間ではなくなってしまう。

これは、エドゥアール・マネ(19世紀・フランス)の「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾの肖像」。ベルト・モリゾは当時の女流画家で、エドゥアール・マネの弟、ウジェーヌ・マネと結婚しています。でも彼女の本当の気持ちは、ウジェーヌよりエドゥアールのほうにあったようだ。こうして見てみると、画家を見つめるベルト・モリゾの気持ちが見えてくるようです。わたしはこの絵が好きで、いつだったか、何かで自分のプロフィール画像みたいに使ったことがあったな。才気を感じる瞳ですね。

これは「フローラ」ティツィアーノ・ヴェチェリオ(16世紀、イタリア)。ふくよかというより、やわらかいながらもがっしりとした体つき。体躯が豊かだというのは、かなり魅力的ですね。最近の女性はみな細いけど、こういう女性も美しいな。暗闇に浮かびあがる金髪なども、とてもきれい。モデルはティツィアーノの妻ではないかとどこかで読んだことがあります。学術的にはいろんなことを言われていて、ネットでも調べたのだけど、その解釈の内容があまり好きじゃなかったので、ただ、美しい女性像の一つとして紹介してみました。
今日はたくさんの名画の美女を紹介してみました。こうして並べてみると、すごいですね。みんな美しいけれど、みんな違う。それぞれに、目が小さかったり大きかったり、金髪だったり茶色の髪だったり、やさしそうだったり、ちょっと気が強そうだったり、はかなそうだったり、しっかりしていそうだったり。もちろん画家の個性や好みもあるんでしょうが。
みんなちがって、みんないい。(by 金子みすず)
みんなきれい。