世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

陽だまり

2013-05-06 06:58:47 | 薔薇のオルゴール

眠っている あいだに
夢の中を そっと出ていって
ぼくは 風になった
ふりそそぐ 日の光
お日さまが わらって
見えないぼくに 光の服を着せてくれる

ぼくは 町はずれの
林の中へ とんでいって
そこで 金の木漏れ日のもようが
魚の群れのように踊る
下草の上に ねころんだ
すると 木の枝を走る りすが
ぼくを陽だまりと勘違いして
ぼくの中に走ってきて
ぼくの胸の中にじっと立って
木漏れ日をあびながら
ふしぎな目で 遠いところを見た

あたたかい しあわせが
満ちてくる
ああ ぼくは
だれかを愛するために
ここにいるのだな

小さなりすのための
小さな陽だまりの心を
ぼくはぼくの中で 光る玉にして
記憶の宝箱に そっと入れるのだ

ぼくの宝箱は 木でできていて
薄紅の オールド・ローズの絵が
蓋に描いてある
時に 蓋を開けもしないのに
オルゴールの音で 不思議な歌を歌う
そうすると ぼくは
遠い ふるさとの
ほんとうの お父さんとお母さんを
思い出すのだ

お父さんとお母さんは
銀河の海の
小さな岬の村の
水色の壁の小さな家に住んでいる
庭には 薄紅の
オールド・ローズの花が咲いている

オルゴールは 玉をぶつけて鳴らすような
かすかな音で
遠い銀河の岬の
静かな波の歌を歌うのだ

目を閉じて 胸の中に
りすを抱いて ぼくは
神さまのかわりに
小さなりすのための 陽だまりになる
思い出の波は今 ひたひたと
ぼくの耳を濡らしている

(オリヴィエ・ダンジェリク、遺稿より)




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