アンニーバレ・カラッチ、16世紀イタリア、バロック。
死んだ男を抱いて、女が泣いている。戦争が起こると、よくこういう風景が見られた。息子や夫が戦死したという知らせを受けて、女が泣き崩れる。愛するものを失った女ほど、悲しいものはない。死んだ男は、自分を守ってくれ、生活を保障してくれ、子供たちを導いてくれる、偉大な男だったのだ。それをむごい戦争に道具のように扱われ、奪われた。戦争は女の人生も狂わすのである。
昔の戦争では、負けた側の男は皆殺しにされ、女は性奴隷にされた。略奪、強姦は戦場の常であったのだ。人間の美と幸福を破壊しつくす戦争は、どんな大義名分があろうと、悪である。