世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ロレンツォ豪華王の肖像

2016-09-20 04:11:55 | 霧の風景


ジョルジョ・ヴァザーリ、16世紀イタリア、マニエリスム。

これも偽物である。だがイタリアはまだ良心的だ。ヨーロッパ各国の王族を調べていくと暗澹たる思いを持つ。あまりに愚かなことをしている人間が多い。
多くの芸術家のパトロンとなりイタリア・ルネサンスを最盛期に導いた人物として有名だが、画家ヴァザーリは直接にはこの男を知らない。だがバックに描かれた仮面は目を水差しの注ぎ口に刺され、ロレンツォにささやきかけるように唇を寄せている。おれは見ているぞ、本当のことを知っているぞ、と言っているようだ。事実、ロレンツォの業績は非常に暗いものだ。影でつぶしている人間がいくらもいる。馬鹿なことをやっているのを隠すために、様々な画策をしたのだ。画家はロレンツォの娘の孫にあたるトスカーナ大公コジモ1世につかえているが、その筋から何かの話を聞いていたのかもしれない。
本当のロレンツォは暗愚な魂であったが、様々な霊的工作によって立派な人物に仕上げられた。だがこの男がほかの馬鹿よりましな点は、霊的世界に退いてから、自分を何とかしたことだ。いやなことにならないように、メディチ家を滅ぼしたのだよ。地上の栄光よりも真実が大切なのだと導かれ、それに従ったのだ。
ルネサンスが輝かしいものとして今にも伝えられているのは、こうしたロレンツォの魂の改悛が一つの原因なのだ。






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