世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

オラブの変①

2018-02-11 04:12:34 | 風紋


その年の稲刈りも無事に終わった。村の皆で協力し合い、オロソ沼の豊かな稲を刈り、村の稲蔵にはまたたくさんの米が入った壺が並んだ。エルヅがそれを嬉しそうに数えている。

「今年の壺の数は去年と同じだよ。またうまい米がいっぱい食える」

エルヅは最近楽しそうだ。場所の大きさを数える方法を編み出して以来、いろいろな場所を数えている。ただそれだけのことなのだが、数えられることそのものが楽しくてしょうがないらしい。

「クプダ(広さ)と名付けることにしたんだよ。場所が大きいことをクプド(広い)というじゃないか」
「ああ、そうだな」
アシメックも面白そうにうなずいた。誰かの明るい顔を見るのが、彼はうれしいのだ。

「いろんなクプダを数えているんだ。この前はレンドの家の中を数えさせてもらった。レンドには変な顔されたけど、おれは数えるのが好きだし。迷惑はかけないから」
「ああ、いいよ。宝蔵の見張りをさぼらない程度に、自分の好きなことはやればいい」

アシメックが言ってくれたので、エルヅは嬉しそうに笑った。エルヅもアシメックが好きなのだ。子供のころから変わった奴だと言われてきたけれど、アシメックだけはいつでも、エルヅのこういうところを好きだと言ってくれる。

アシメックはエルヅのそばを離れると、自然、足をイタカの野の方に向けた。オラブのことが気になってしょうがなかったのだ。稲刈りは何の支障もなく無事に終わったが、ミコルの占いのこともあり、何か妙なことが起こるような予感がしてならない。




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