世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

偶数の羽①

2018-02-21 04:12:40 | 風紋


その翌日、アシメックはケセン川で、ゴリンゴを送り出した。交渉場で、たっぷりと嫌味を言われ、補償を約束させられた後だった。

怪我をした女は、かなり若い女らしい。オラブに追いかけられ、逃げているうちに高い木に登り、枝が折れて落ちたのだ。足の骨を折った。悲鳴を聞きつけた男が駆けつけると、オラブは慌てて逃げたが、刺青がないことは確認された。おまけに、川べりにネズミの頭蓋骨が落ちていた。そんなものが、ヤルスベの川岸にあるはずがないのだ。ヤルスベ族もネズミは食わない。食うとしたら、オラブだけだ。

申し開きのしようもなかった。アシメックは素直にゴリンゴに謝った。そのほうがいいと感じるのだ。カシワナカの教えにも、悪いことをしたら素直に謝れとある。村から逃げているとはいえ、オラブはカシワナ族の人間だった。族長が代わりに謝らなければならないのは、当然なのだ。

自分より大きい男が自分に頭を下げるのを、少し憐憫を含んだ目で見つつ、ゴリンゴは舟に乗ってヤルスベに帰っていった。アシメックはほっとしながらも、大きなため息をついた。これから宝蔵にいき、なにがしかの品物を選らなければならない。おわびとして、怪我をさせた女に贈らなければならないのだ




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