フランスの孤児院で見かけた明るくけなげな女の子ジュリー・アンドレ(レスリー・キャロン)を気まぐれ半分でアメリカの名門大学へ入学させた足ながおじさんこと富豪のジャービス・ペンドルトン三世(フレッド・アステア)。
大学のダンスパーティで意気投合した二人はニューヨークで再会する。
ウォルドルフ・アストリア・ホテル最上階のスイートルームでディナーをとったあとの会話。
「ねえジャービス、あなたの過去がわかってきたわ。」
「それは驚きだね、どんな風に?」
「昔、背の高いスレンダーなブロンド女がいて、あなたはその美女を愛したけれど、彼女は別の男と結婚した。あなたを振るなんて、バカな女。」
「ありがとう(笑)」
「それで女性不信になった、そうでしょ?」
「いや、背の高いブロンド女ではなかったな、小柄な赤毛の女の子や、大柄なブルネット、それからスイスで会った女性、その次は―」
「あらあら、そのひとたちみなを愛したの?」
「夢中だったよ」
「でも結婚はしなかった」
「夢中が長続きしなくて」
「ふふ、じゃあ、一生しないの?」
「結婚かい?うーん、分からないな。恋愛は思案の外だから。たとえば―」
「サムシングス・ガッタ・ギヴ」を歌い出すアステア。
※右下にカーソルを置くと現れる設定ボタンで日本語字幕が出せます。
彼らはそのまま夜のニューヨークへ繰り出し、エル・モロッコやラテン・クオーターといった有名クラブをはしごして踊り明かし、恋に落ちる。
ホテルに戻った二人。
「朝刊が届いてる」
「昨日はどんなことが起こったかしら?」
紙面を広げるジャービス。
「男が強盗に遭った」
「ひどいわね」
「女の子が結婚した」
「素敵ね、誰と?」
「どこかの男と。長く恋仲だったそうだよ」
「ほかに何か起こったかしら?」
「ああ、でもそれは新聞には書かれていないよ。おやすみ、ジュリー。」
「おやすみなさい、ジャービス。」
閉じたドアの前できれいに一礼するジャービス。
ひょっとするとこのシーンが、これまで観た映画の中で一番好きなのかもしれない。
そのくらい、繰り返し書いている。