リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

クロッシング

2011年09月13日 09時46分45秒 | 音楽系
人名で「ヤシロ・ア・・・」とくれば、世間的には八代亜紀でしょう。でも中には矢代秋雄の名前が真っ先に出てくる人もいたりして。(笑)

矢代秋雄は、1976年に47歳で早逝した日本の作曲家です。75年か74年の三重国体の音楽も担当しています。そういう類に音楽を担当するということは当時は売れっ子だったということですよね。

アマゾンの案内で、NHK現代の音楽アーカイブシリーズのCDが出るというので、早速矢代秋雄のものを買ってみました。曲目はピアノ協奏曲、2本のフルートとピアノのためのソナタ、ピアノ・ソナタ。最初のピアノ協奏曲はとても有名な曲でいくつか録音が出ています。私も2枚もっていますが、新しい録音のナクソス版が好きです。あとの2曲は聞いたことがないので、このCDを買いました。

ピアノ・ソナタはなかなか素晴らしい曲ですね。矢代秋雄は寡作なので、もうあと何枚かCDがでれば全集完結になるかも。

この矢代CDを買ってからはアマゾンから現代の日本の作曲家のCDが出るたびに案内がくるようになりました。ま、いちいち買っていてもなんでしたが、ある一枚に食いついてしまい、アマゾンの思うツボになってしまいました。

そのCDは、武満徹のArcというアルバムです。このアルバムは武満が80年代の中頃に作風を変化させて行く前の作品が3曲入っています。いわゆる前衛的な作品です。武満晩年のマイルドな感じの作品群でもなんか昨今は忘れ去られているみたいですから、武満が若い頃の前衛的作品群なんて今の世の中では受けるわけがなく、よくぞ新しい録音で出してもらったもんです。(沼尻竜典指揮東京都交響楽団2000年19月のライブ録音他、fontec FOCD9273)

曲目は、クロッシング、アーク、オリオンとプレアデスの3曲。この中で私はクロッシングという曲に特に思い入れがあります。この曲は、大阪万博の鉄鋼館の音楽として作られた曲はです。なんで鉄鋼と現代の音楽が結びつくのか、と不思議に思うかたもいるかもしれませんが、これはたぶん当時新日本製鉄がラジオでクラシック音楽の番組を持っていたからじゃないかと思います。(当時はCBCでした)その番組では昨今のクラシック音楽の番組みたいに、もう甘く甘く砂糖を塗ってさらにチョコレートにどっぷりつけて、さらにもう一度砂糖をまぶして食べやすくしたみたいな番組と異なり、しっかりと硬派してました。

そのラジオ番組名は新日鉄コンサート、その前は八幡製鉄コンサートでした。それは大学受験の勉強をしている夜の週に一度の「密かな(笑)」楽しみでした。もちろん古典作品も放送されていましたが、黛敏郎の無伴奏チェロのためのBUNRAKUとかオーケストラのための舞楽なんかはこの番組ではじめて聞きました。冒頭で紹介しました矢代作品はやはり当時放送されていましたNHK番組「現代の音楽」(FM)の録音アーカイブです。

こうしてみますと、そのころの日本って何と芸術に寛容というかハイレベルだったんでしょう!って思いますね。舞楽なんかはTVでもちょくちょくやってた記憶があります。今は現代の作曲家の作品はFMでたまに聞けるくらいで、普段はまず聞くことはなくなりました。楽譜だって、そのころ(高校生の頃です)桑名市内で武満徹の作品が雑誌の付録として入手できましたよ。あの文化ハイレベル国家がいったいどうなってしまったんでしょうねぇ。

ということで、これからクロッシングのことについてもっと書こうと思っていたんですが、長くなるので、続きは次回。