リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

教育評論家モード!?

2011年10月18日 22時58分06秒 | 日々のこと
今日の日経新聞のコラム。
円周率の話題でした。なんでも五兆桁まで計算した方がいるらしいです。すごい桁数ですねぇ。そして後半部にこんなことが。

(前略)
小学校では円周率を3と教えている、という批判がかつてあった。じつは学習指導要領には、場合によっては3でもいいと書いてあっただけだ。円周率は3.14。誰もがそうすり込まれてきたから当惑が広がったに違いない。教科書信仰ゆえの騒ぎだったのだろう。
(後略)

これには少し食いついてしまいました。確か、次の学習指導要領(つまり現行の)では円周率を3と教えなくてはいけなくなった、と騒ぎ立てたのはマスコミであったはず。「小学校では円周率を3と教えている、という批判がかつてあった」なんて書き方は、なんか人ごとみたいです。

実は、この評判の悪いゆとり教育をもたらした学習指導要領作成に関わっていたことがありまして(中学校の英語です)、毎週のように東京の文部省に通っていました。もうヘロヘロになって一連の会議が終了、その後告示、そして次の日の朝、ラジオで告示があった旨を伝えるニュースを聞きながら、学校に向かいました。

・・・英語科では必修単語が大幅に減らされわずか100語になりました。・・・とラジオ。

チャウチャウ、そんなことどこにも書いてへん。コアになる機能語(代名詞や前置詞など)を100語指定しただけなやけどなぁ。なんてつっこみを入れたりしていました。もう、ねじまげんといてほしいもんやわ・・・

そのあとです。小学校の算数で、なんと円周率を3と教えなくてはいけなくなった!!ってマスコミが騒ぎ立てたんですね。これも実は最初からどこにもそんな風には書かれていませんでした。よっぽど新聞に投稿しようかと思ったんですが、ま、ちょっと専門外だし・・・と思っているうちに沈静化というか人の噂もナントカみたいに忘れ去られていきました。

そしてそのあとに、今度は学力低下論が台頭。これも何の科学的根拠がないのにマスコミが騒ぎ立てたので、みなさんそんなもんか、やっぱりゆとり教育はいかんなぁ、ゆとり教育の学習指導要領はもっとあかんなぁ、なんてなって行ったのはご存じの通り。

今の学習指導要領も本年度限り、これだけボロカスにいわれた学習指導要領もめずらしいですが、一応ほんのカケラ程度ですが作成に関わってきた者としては残念です。現行の学習指導要領が学力低下をもたらしたとするなら、それは次の2点、総合学習と絶対評価が関わっていたと私見では思います。

大半の学校では総合学習の理念を生かすことは、スタッフの数、質の面から困難でしょうし、絶対評価もかなりいい加減に扱われていました。本来特別活動で扱われるべき内容を(例えば、修学旅行の準備とか学校行事の準備など)を総合学習として扱う学校が一杯出てきたし、キチンとした評定尺度に基づいていない、相対評価的な甘い評価をしているところが一杯出てきていました。で、それらの帰結として、学力は低下するのは目に見えていたのです。

もっとも現行の学習指導要領を1年経験しただけで私は学校を辞めてしまいまして、その後どうなったかはよく知りません。でも施行2年くらい前から警鐘を鳴らしまくってました。今はどうなってるんでしょうねぇ。各教科内容を精選したのゆとり教育がだめなのではなくて、理念は美しいが現場では対応できない総合学習を持ち込んだことと、絶対評価をきちんとやってこなかったことが問題だったと思うんですが、マスコミはこの肝心なところにはちっとも触れません。その総括をきちんとしないまま、来年度から次の学習指導要領が施行されます。今日はいつになく教育評論家モードです。(笑)