リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

クロッシングの続き

2011年10月04日 14時25分46秒 | 音楽系
いつぞやのクロッシングの続きです。武満徹のクロッシングというオーケストラ作品は1970年の大阪万博鉄鋼館のために作られた曲です。なぜ鉄鋼館が現代曲かという理由は前回に書きましたが、新日本製鐵がクラシック音楽のラジオ番組のスポンサーで、その番組では、昨今のお砂糖を一杯まぶしたクラシック音楽番組とは異なり、現代音楽も時々紹介されていました。

大阪万博は、私はちょうど大学に入った年で、万博なんてアホらしくて行く気はなかったんですが、鉄鋼館で、武満徹、高橋悠治、クセナキスの3人の音楽がマルチスピーカーで鳴っているというので、それだけを聴きにのこのこと大阪まで出かけました。さすがにここは空いていて(笑)、ゆったりと鑑賞することができました。もちろん他は何も見ずに、さっさと帰りました。

武満徹の作品は件のクロッシング、高橋悠治はエゲン、クセナキスは、ヒビキ・ハナ・マという曲でした。高橋悠治の作品は電子音楽でパカパカパカという感じの音が鳴っていたような気がします。クセナキスの作品は・・・どんなのか忘れました。(笑)その後レコードも買ったのでまた聴きなおしてみたいと思います。

武満のクロッシングは、オーケストラの中に英語やドイツ語の喋りが入る大変印象的な作品です。今回彼の死後録音されたこの作品(2000年の録音です)を聴いて、クロッシングという作品のすばらしさに感銘を受けました。というか、1970年当時の演奏ではここまで表現しきれてなかった感じがします。

同じ事が、武満作品のサクリファイスの録音にも感じました。この曲はリュート、アルト・フルート、ヴァイヴ、クロタルというとてもユニークな編成の室内楽作品ですが、多分60年代終わりか70年代初めに録音されたLPレコードがありまして、それを買って聴いたことがありました。この曲の楽譜が、音楽芸術の付録にあって、それを持っていたんですが、楽譜を見てもどんな音になるのかさっぱり見当がつかず、LPを聴いて、フーンこんなもんか、なんて思ったものです。

ところが、1993年にフィンランドの演奏家たちの録音を聴きまして、とても驚きました。20数年前のLPとは全然サウンドが違うのです。もっともこのCDでは、リュートノかわりにロマンティック・ギターを用いていたのですが、それでも違いすぎです。というか、まぁ、はっきり言うと、最初の録音はどうもプレイヤーが曲をよく理解していなかったのかも。シロウト同然と言っていい人も録音に参加しているし。当時は人材不足だったんでしょう。

武満の初期の頃の作品を新しい世代の演奏家がどんどん取り上げてコンサートや録音をしていってほしいですね。ま、もうからないでしょうから、なかなか難しいことでしょうけど、武満の初期の作品はとても魅力的ですから。