9月はあちこちでコンサートや講座をやっています。
2日にはミューズサロンで、ギターを弾く人たちのための講座「そう弾くんだったのか!ソルの月光」と題して公開講座を持ちました。公開レッスンの形をとって、フェルナンド・ソル作曲の練習曲ロ短調「月光」をどう弾いたらいいかというのを聴いて頂く講座です。このソルの練習曲はロ短調で書かれていて、ギターを弾く人にはとても人気のある曲です。でもこのロ短調というギターではやや弾きにくい調であることもあってか、変な弾き方がなんか定番みたいになっている、ということでこの曲を公開講座の題材に選びました。
私が弾いているギターは、ケルン在住のヘンドリック・ハーゼンフース氏に作ってもらった楽器です。パリにある作者不詳のギターをモデルにした楽器です。今回はガムート社のビーフ・ガットを張ってみましたが、とてもきれいに響きます。
12日には新城市で、チェンバロの杉浦道子さん、ソプラノの平野とも子さんと一緒に、お昼と夜の2回コンサートをしました。はじめは夜の部だけだったんですが、お昼に夜の会場とは別の場所、地区の公民館でお年寄りの方に聴いて頂きました。公民館は典型的な昔風の造りで、土間があり「おくどさん」がありました。ここで今でも餅つきをしているそうです。おじいちゃんおばあちゃんが聴衆なら、ルネサンスリュートでスコットランドの曲を用意しておいてもよかったですねぇ。でもみなさん、ヴァイスの曲も自作の夜間飛行もとても熱心に聴いていただきました。
夜の部はJR新城駅のすぐ近くにあるサクラ座・和音というところです。会場はもともとはスナックだったというところで今は喫茶店をされているとのこと。音がとてもきれいに響くところで、近くの厨房からのモーターの音も入らず、小さな専用コンサートホールみたいに音がきれいに響きました。
曲はバロックリュートのソロとヘンデルのアリア、ヴィヴァルディのトリオ(チェンバロと)その他を演奏しました。ヴィヴァルディの曲は7月に岐阜でのコンサートで弾きましたが、今回は弦をガットに変えて演奏してみました。ガット弦の音はやわらかめ(言い換えれば多少地味目)なので、チェンバロと合うかなと若干心配はしましたが、結果はナイロン弦を使って演奏したときより大きくきれいに響いていました。
続きまして、23日は「リュート音楽のひととき11」をミューズ・サロンで開催しました。この「ひととき」シリーズは、定期的(半年に1回くらいのペース)に開いている私の主催コンサートです。今回は、ガロのトンボー、ジェイソンの組曲からの抜粋、自作の組曲、シェドルの現代作品、およびバッハの組曲という、超重いプログラム。まるでリサイタル並です。(笑)
まぁ自分が主催しているので、誰に気兼ねすることもなくプログラムを組むことができるのですが、それにしてもシェドルの作品から聞こえてくる強烈な和音ははじめて聴いた方はちょっと耳になじまなかったかも知れません。
古楽器で現代作品を演奏するのはなかなか大変で、現代楽器であるギターやヴァイオリンとかモダナイズされた和楽器で演奏するのとは次元が違う感じがします。ちょうど50年代の古い車でレースに挑むような・・・
でもその次元が異なることこそ、リュートで現代作品を演奏する意義であると思います。モダン楽器のようなダイナミクスレンジも音量もない、楽器をたたいたりするパーカッシブなこともあまり器用にできない、フラジオレットもあまりクリアに響かない、なにより弦が多すぎて邪魔くさい!!=これはヴァイスやバッハを演奏するにはとても都合がいいのですが・・・でもこれこそが個性であり、現代音楽を演奏する楽器としての新しいリュートというものが見えてくるというものです。
私は個人的には高校生の頃から現代音楽が好きでして、今でもよく聴きます。カーステレオで松平頼則を聴きながら買い物に出かけたりしています。(笑)でも自分で演奏できる楽器であるリュートのための作品はとても少ないので、何年か前から何人かの作曲家に作品を依頼したり試作をお願いしたりしています。来年のリサイタル用に、ベルリン在住の久保摩耶子さんに曲を依頼したのもこの流れからです。
話が現代音楽の方に行ってしまいましたが、今までの9月のコンサートではガット弦を張った楽器を使いました。(実は今月はまだあと2回ありまして、それはナイルガット弦を張ったルネサンスリュートを使います)ギターは全部ガット弦を張りましたが、バロックリュートは実は4コースまでがガットであとはオクターブ弦を除いて合成樹脂弦です。メロディはガットで奏でているが、バスは現代式の弦という感じです。1コースは0.42ミリとか0.44ミリというとても細い弦なので、いままでならよく切れて使い物にならなかったのですが、今回使用しているガムート社のビーフガット弦の0.44ミリの1弦は3週間近く使っている弦です。
この弦は強度的には充分実用的であると言えます。音のヘタリも少なく、ケバもほとんど出ていません。E.G.バロンの著書に、ローマのなんとかという弦は4週間保つ・・・云々の記述がありますが、当時としても細いトレブル弦が4週間保つというのは特筆モノだったわけです。ですから、ビーフガット弦が3週間保つというのはかなり立派だと思います。でも同じガムート社のビーフガット弦でも0.40とか0.38は全く実用にはならないくらいモチが悪かったですが、0.02ミリだけ直径が増えただけで、こんなにモチが違うのは何なんでしょうねぇ。
ガムート社のガット弦はドルで買える(アメリカの会社です)ので、昨今の円高のお陰でとても安く購入できます。1弦に関して言えば、合成樹脂も含めてあるゆる弦の中で一番安価です。といって私はあらゆる人にガット弦をすすめることは出来ません。というのも湿度と温度が急に変化したときは大きく狂うし、全く切れることは心配しないでよいナイロン弦と比べたらやはりガット弦は切れます。弦の表面も常に湿度の影響を受けます。ほぼメンテナンスフリーに近い合成樹脂弦に比べたら、手間はかかります。でも音はやわらかく、豊かな音色でダイナミクスレンジも合成樹脂よりは優れます。このあたりを承知の上で使ってみるというのもいいかも知れません。なお、この話はせいぜい5コースまでの話で、バス弦に関しては何とも申し上げられません、はい。
2日にはミューズサロンで、ギターを弾く人たちのための講座「そう弾くんだったのか!ソルの月光」と題して公開講座を持ちました。公開レッスンの形をとって、フェルナンド・ソル作曲の練習曲ロ短調「月光」をどう弾いたらいいかというのを聴いて頂く講座です。このソルの練習曲はロ短調で書かれていて、ギターを弾く人にはとても人気のある曲です。でもこのロ短調というギターではやや弾きにくい調であることもあってか、変な弾き方がなんか定番みたいになっている、ということでこの曲を公開講座の題材に選びました。
私が弾いているギターは、ケルン在住のヘンドリック・ハーゼンフース氏に作ってもらった楽器です。パリにある作者不詳のギターをモデルにした楽器です。今回はガムート社のビーフ・ガットを張ってみましたが、とてもきれいに響きます。
12日には新城市で、チェンバロの杉浦道子さん、ソプラノの平野とも子さんと一緒に、お昼と夜の2回コンサートをしました。はじめは夜の部だけだったんですが、お昼に夜の会場とは別の場所、地区の公民館でお年寄りの方に聴いて頂きました。公民館は典型的な昔風の造りで、土間があり「おくどさん」がありました。ここで今でも餅つきをしているそうです。おじいちゃんおばあちゃんが聴衆なら、ルネサンスリュートでスコットランドの曲を用意しておいてもよかったですねぇ。でもみなさん、ヴァイスの曲も自作の夜間飛行もとても熱心に聴いていただきました。
夜の部はJR新城駅のすぐ近くにあるサクラ座・和音というところです。会場はもともとはスナックだったというところで今は喫茶店をされているとのこと。音がとてもきれいに響くところで、近くの厨房からのモーターの音も入らず、小さな専用コンサートホールみたいに音がきれいに響きました。
曲はバロックリュートのソロとヘンデルのアリア、ヴィヴァルディのトリオ(チェンバロと)その他を演奏しました。ヴィヴァルディの曲は7月に岐阜でのコンサートで弾きましたが、今回は弦をガットに変えて演奏してみました。ガット弦の音はやわらかめ(言い換えれば多少地味目)なので、チェンバロと合うかなと若干心配はしましたが、結果はナイロン弦を使って演奏したときより大きくきれいに響いていました。
続きまして、23日は「リュート音楽のひととき11」をミューズ・サロンで開催しました。この「ひととき」シリーズは、定期的(半年に1回くらいのペース)に開いている私の主催コンサートです。今回は、ガロのトンボー、ジェイソンの組曲からの抜粋、自作の組曲、シェドルの現代作品、およびバッハの組曲という、超重いプログラム。まるでリサイタル並です。(笑)
まぁ自分が主催しているので、誰に気兼ねすることもなくプログラムを組むことができるのですが、それにしてもシェドルの作品から聞こえてくる強烈な和音ははじめて聴いた方はちょっと耳になじまなかったかも知れません。
古楽器で現代作品を演奏するのはなかなか大変で、現代楽器であるギターやヴァイオリンとかモダナイズされた和楽器で演奏するのとは次元が違う感じがします。ちょうど50年代の古い車でレースに挑むような・・・
でもその次元が異なることこそ、リュートで現代作品を演奏する意義であると思います。モダン楽器のようなダイナミクスレンジも音量もない、楽器をたたいたりするパーカッシブなこともあまり器用にできない、フラジオレットもあまりクリアに響かない、なにより弦が多すぎて邪魔くさい!!=これはヴァイスやバッハを演奏するにはとても都合がいいのですが・・・でもこれこそが個性であり、現代音楽を演奏する楽器としての新しいリュートというものが見えてくるというものです。
私は個人的には高校生の頃から現代音楽が好きでして、今でもよく聴きます。カーステレオで松平頼則を聴きながら買い物に出かけたりしています。(笑)でも自分で演奏できる楽器であるリュートのための作品はとても少ないので、何年か前から何人かの作曲家に作品を依頼したり試作をお願いしたりしています。来年のリサイタル用に、ベルリン在住の久保摩耶子さんに曲を依頼したのもこの流れからです。
話が現代音楽の方に行ってしまいましたが、今までの9月のコンサートではガット弦を張った楽器を使いました。(実は今月はまだあと2回ありまして、それはナイルガット弦を張ったルネサンスリュートを使います)ギターは全部ガット弦を張りましたが、バロックリュートは実は4コースまでがガットであとはオクターブ弦を除いて合成樹脂弦です。メロディはガットで奏でているが、バスは現代式の弦という感じです。1コースは0.42ミリとか0.44ミリというとても細い弦なので、いままでならよく切れて使い物にならなかったのですが、今回使用しているガムート社のビーフガット弦の0.44ミリの1弦は3週間近く使っている弦です。
この弦は強度的には充分実用的であると言えます。音のヘタリも少なく、ケバもほとんど出ていません。E.G.バロンの著書に、ローマのなんとかという弦は4週間保つ・・・云々の記述がありますが、当時としても細いトレブル弦が4週間保つというのは特筆モノだったわけです。ですから、ビーフガット弦が3週間保つというのはかなり立派だと思います。でも同じガムート社のビーフガット弦でも0.40とか0.38は全く実用にはならないくらいモチが悪かったですが、0.02ミリだけ直径が増えただけで、こんなにモチが違うのは何なんでしょうねぇ。
ガムート社のガット弦はドルで買える(アメリカの会社です)ので、昨今の円高のお陰でとても安く購入できます。1弦に関して言えば、合成樹脂も含めてあるゆる弦の中で一番安価です。といって私はあらゆる人にガット弦をすすめることは出来ません。というのも湿度と温度が急に変化したときは大きく狂うし、全く切れることは心配しないでよいナイロン弦と比べたらやはりガット弦は切れます。弦の表面も常に湿度の影響を受けます。ほぼメンテナンスフリーに近い合成樹脂弦に比べたら、手間はかかります。でも音はやわらかく、豊かな音色でダイナミクスレンジも合成樹脂よりは優れます。このあたりを承知の上で使ってみるというのもいいかも知れません。なお、この話はせいぜい5コースまでの話で、バス弦に関しては何とも申し上げられません、はい。