リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バス弦にフロロカーボンを使う

2015年01月31日 17時11分00秒 | 音楽系
最近リュートのバス弦に太いフロロカーボン弦を使っています。きっかけはふとしたことから5コースあたりに太いカーボン弦を使ってみようと思い立ち、製造会社のクレハのHPにアクセスしたことです。

実はもう20年以上前、世界中で(と言っても日本とヨーロッパとアメリカのごくごく一部の地域と人たちの間ですが)フロロカーボンの弦がリュートに使われ始めたことがあります。製造しているのが日本の会社ですので、購入希望のスイスの演奏家に弦(実は釣り糸ですが)を送ってやったこともありました。この頃は主に高音弦が中心でした。というのもそんなに太いゲージのものがなかったからです。

クレハのHPにアクセスして、以前よりは太いのが出ていないかと探し始めたところ、あるはあるは、何と150号という信じられない太さのものまで出ていました。以前はせいぜい20号くらいまででしたからびっくりしました。ということはバス弦の全てをカーボンにできるのかと、販売されている各号の直径をBeier String and Fret Caluculatoに入力して調べて見ましたところ、全てのバス弦に対応できることがわかりました。

そこで大枚をはたいて40号から120号まで10号おきに購入いたしました。(110号だけは手に入りませんでしたが)弦一本分としては安いのですが、25mとか30m単位ですので、絶対金額としては結構行ってしまうのです。



ちなみにこの「太いカーボン弦」は鮪を釣るための糸で商品名を「シーガー万鮪(まんゆう)」と言います。鮪を釣るのになぜこんなに小刻みなゲージがいるのよくわかりませんが、リュートのバス弦として使うのにはとても都合がよいです。ひょっとしたら製造元のクレハの社員にリュートを弾いている人がいるのかも知れません。

現在は、アーチリュートを除き全ての楽器のバス弦に使用しています。コンサートでの運用は昨年の6月頃のコンサートから使っています。弦としての性能はいままで何度となくトライしてきた太いプレーンガットやガムート社のギンプ弦、ピストイ弦などよりずっといい音です。コンサート会場でちゃんと音が通ります。大して期待してはいなかっただけに、瓢箪から出たコマという感じです。

私の知る範囲では、充分にバス弦として機能するガット弦がまだでていない(もちろんヴァイスの時代には確実にあったでしょう)のが現状だと考えていますので、ヴァイスが使っていたであろうバス用ガット弦の代替品として見るならば結構いけるのではと思います。

参考までに、弦長70.5cm/12c&13cは78.5cmのバロックリュート(415)用のデータを以下に示します。

6コース→40号(3.30kg)
7コース→50号(3.25kg)
8コース→60号(3.20kg)
9コース→70号(2.92kg)
10コース→80号(2.92kg)
11コース→100号(2.91kg)
12コース→80号(2.56kg)
13コース→100号(2.55kg)

9コースはミ♭にすることもあるので、80号の方がいいかも知れません。
その場合バランスをとるため10コースを90号にした方がいいでしょう。
12,13コースはバスライダーの強度のことを考えて少しテンションを低めにしています。