リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

フェイクコラム

2017年02月28日 10時47分50秒 | 音楽系
最近フェイク・ニュースということばがよく聞かれますが、今朝の某有名経済紙にはフェイク・コラムがありました。

クラシック音楽のアルバムのジャケットに使われている女性絵画をひ紐解くというテーマの連載で、本日はフェルメールのギターを弾く女でした。



でもこの解説がいけません。描かれている楽器が4コースのルネサンス・ギターだとありました。この楽器はどう見ても5コース10弦のバロック・ギターです。件の絵はボディ付近の弦は正確に描かれていませんが、ヘットのペグやペグ穴をみれば、弦を10本張っている楽器だということがわかります。

それにそもそも17世紀のまっただ中のオランダに生きたフェルメールは、バロック・ギターの最盛期ともぴったり重なります。ルネサンス・ギターはもう100年前の楽器です。この頃の音楽は、今で言うバロック音楽の時代でもあったし。

このCDに納められている曲、こちらも少しフェイク気味で、解説者によればダウランドやバードの作品が収められているとのこと。具体的な曲目がわからないのでアレですけど、ちょっと時代と地域がずれているような感じです。

あと掲載されてるジャケットをよく見ますと、右下の方にThe National Galleryと書いてありまして、ジャケットの絵画がロンドンのナショナル・ギャラリーにあるみたいな印象をうけますが、件のフェルメールの絵はここにはありません。うーむ、トリプル・フェイクになります。

曲目や絵の所在地はさておき、このコラムの著者は音楽評論家ということですから、日本を代表する知的な新聞にこのようなことを書いてはいけません。演奏家が知らないようなことでも幅広く知っていて文筆力もあるのが評論家ですから、これは残念という他はありません。