リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ヤコブ・ファン・デ・ゲースト1973のバロック・リュート

2017年11月04日 13時25分38秒 | 音楽系
私が使っているバロック・リュートのひとつはモーリス・オッティジェー作ですが、彼の師匠であるヤコブ・ファン・デ・ゲーストについて以前当ブログで書いた覚えがあります。モーリスは1974年からヤコブの工房で働いていて、師匠が亡くなったあとは独立しています。

そのヤコブの楽器が「突如」伊勢市在住のギター製作家である河村和行さんの工房から出てきました。まぁ、実際には突如というわけではなく、河村さんが丁寧に保管していたのを私が知らなかったということですけど。全く別の用で河村さんの工房にお邪魔したのですが、「実はバロック・リュートが一本あります」とおっしゃるので、拝見させていただくと、何ととてもきれいなヤコブ・ファン・デ・ゲーストの楽器が出てきたのです。



楽器の由来を伺うと、今村泰典氏に偶然大阪で会ったのをきっかけに楽器を譲ってもらったそうです。楽器の製作年は1973年、河村さんの手に割ったのが1976年です。ヤコブがまだひとりで作っていた時代の作品です。

見せていただいた楽器は、ある意味奇跡的というくらいの保存状態の良さです。しかも今村氏がたっぷりと3年間弾きこんでいます。プロの手で弾きこみ、プロが保管していたということです。表面板の焼けはまるで数年程度の状態。実際、私が2009年にモーリスに作ってもらった楽器より色が白いです。

河村さんから楽器を預かって、まずきれいに掃除して、各部をチェック、そして一番気になる表面板とブリッジの写真撮影をしておきました。バス・バーの状態は問題なし、表面板のたわみ、割れもなし、ブリッジの接着状態もオーケーです。ネックのそりもなし、バス・ライダーの接着状態も問題なし、ペグの状態も極めて快調です。パーチメントの端が5ミリくらいはがれていましたが、これは問題と言えるものではないでしょう。

張ってあった古い弦のピッチを392まで上げてみました。いやぁ参りました。想像していたのとは全く異なり、すばらしい音色、バランスです。1973年と言えば私が初めてバロック・リュートを買ったのが1974年です。その楽器とは雲泥の差です。1年前にこのレベルの楽器が存在していたとは今更ながらいささかショックでした。

実はその頃ヤコブのルネサンス・リュートをほんの少しだけ触ったことがありましたが、某製作家の工房に修理で入っていたときのもので状態があまりよくありませんでした。おまけにヤコブは「膠の替わりにボンドでぺたぺた貼り付けている」「弟子を雇って(モーリスのことですね)雑に大量生産している」「だからよく故障する」ということをある人から聞いていたので、大して関心も持たずに今に至っています。これは迂闊でしたねぇ。

今は弦を11コースまで新しいのに交換、12、13コースは外して、392で調弦してあります。弦の張力は48キロ、かなりローテンションです。もう1週間くらい経ちますが今のところは問題は出ていません。とはいえ、44年経過した老体ではありますので、このまま一カ月くらいは様子を見る予定です。

しばらくは11コースで運用して、何カ月か経過して問題がなければ、ローテンション(私が運用している楽器の90%以下)の弦を415まで上げてみようと考えています。弦を選定して計算してみましたが、53キロくらいです。製作時の弦の総張力が52キロくらいなので行けるのではないでしょうか。

そのときに、九州の松尾さんに頼んで、表面板のクリーニング、パーチメントの張替え、ブリッジの弦穴拡張、エンドピンの装着などをお願いしようかと考えています。


東京モーターショーと西洋美術館

2017年11月04日 00時32分06秒 | 日々のこと
所用で東京に行くことになっていましたが、それが取りやめになりまして、ついでにいくはずだったモーターショーと美術館巡りがメインになってしまいました。

いつもならバスで行って経費を節約するところですが、時間がないからと新幹線の予約もしてしまっていましたので新幹線で行きました。さすが新幹線は速いです。

まず上野の西洋美術館です。北斎とジャポニズムという展覧会が開催されていました。他にも行きたい美術館があるのですが、全部モーターショーに行けなくなるといけないので、ここだけにしました。

この展覧会は人がいっぱいであまりゆっくりと見ることができませんでした。内容的にはまぁそこそこという感じ。そのあと、常設展を見て回りました。この美術館は松方コレクションがベースになっているとのことですが、コレクターが余程の目利きだったのでしょうか、いいものがありますねぇ。蒐集作品の質が違います。こっちだけにすればよかったです。

最近購入したという作品でこんなものがありました。


エヴァリスト・ヴァスケニス「楽器のある静物」17世紀後半(部分)

埃がかかっている部分の指あとがリアルです。楽譜もきちんと描かれていますので、曲の特定ができるかも。

さて上野公園内のレストランで一息ついて次はビッグサイトです。新橋からゆりかもめに乗って、国際展示場正門で降りるのですが、思っていたより時間がかかりました。

東京モーターショーは、巷のうわさでは参加メーカーが他国のモーターショーと比べると少なくショボいと言われていますが、確かに参加メーカーが少なく、いつになく意欲みたいなのが今ひとつ感じられませんでした。私の愛車のミニもありませんでしたし、アメ車とかフィアットもなかったかな。韓国車や中国車もありません。もう日本市場は世界から見向きもされないようになってきつつあるのでしょうか。

そんな中で、一番正攻法で迫っていたのがマツダでした。最近急に書くメーカーがEVに傾斜している中、内燃機関の可能性と優れたデザイン性の追求には一本筋が通っていました。



EVと言っても、お値段が高いし、航続距離はミューズに2往復できるかという程度だし、全然実用的でないものをなんであんなに騒ぎ立てるのでしょう。。効率的な電池と発電方法ができたら、いやでもEVに替わっていくと思いますが、今の技術水準ではまだまだ。中国政府の方針に尾っぽを振っているメーカーとそれをあおって騒いでいるマスコミって感じです。

そんな中でマツダはえらいですねぇ。SKYACTIVE X という時期プラットフォームに搭載されてくるエンジンも展示されていました。なんでもディーゼルエンジンと同じような点火方法のガソリンエンジンで、燃費もパワーも良いという画期的なエンジンです。

こういうマツダの姿勢を見ていると、ミニの次はマツダ車かとふと思いましたが、それがそうはいかないのです。実は私は根深いマツダアレルギーにかかっております。それは子供の頃父親が乗っていたR360クーペのエンジンがかからないのでみんなで後ろから押してエンジンをかけたとか、リヤのプラスチック製のシールドから雨漏りしたとか、四気筒のキャロルに乗り換えてもやはり同じようなものだったとか、その後のいわゆる「マツダ地獄」とか、結構長期に渡っていたそれらの印象が鮮明に残っているので、今一歩マツダには踏み込めないのです。今の40代以下の人は違うだろうけど。

さてビッグサイトをくまなく見ていましたら、閉館30分前になりましたので、会場をあとにしました。名古屋のモーターショーは大体行っていますが、東京のは30数年振りでした。まだまだバブルに向かう頃でしたので、今回とは異なりもっと熱気にあふれていた感じが懐かしいです。