私が使っているバロック・リュートのひとつはモーリス・オッティジェー作ですが、彼の師匠であるヤコブ・ファン・デ・ゲーストについて以前当ブログで書いた覚えがあります。モーリスは1974年からヤコブの工房で働いていて、師匠が亡くなったあとは独立しています。
そのヤコブの楽器が「突如」伊勢市在住のギター製作家である河村和行さんの工房から出てきました。まぁ、実際には突如というわけではなく、河村さんが丁寧に保管していたのを私が知らなかったということですけど。全く別の用で河村さんの工房にお邪魔したのですが、「実はバロック・リュートが一本あります」とおっしゃるので、拝見させていただくと、何ととてもきれいなヤコブ・ファン・デ・ゲーストの楽器が出てきたのです。

楽器の由来を伺うと、今村泰典氏に偶然大阪で会ったのをきっかけに楽器を譲ってもらったそうです。楽器の製作年は1973年、河村さんの手に割ったのが1976年です。ヤコブがまだひとりで作っていた時代の作品です。
見せていただいた楽器は、ある意味奇跡的というくらいの保存状態の良さです。しかも今村氏がたっぷりと3年間弾きこんでいます。プロの手で弾きこみ、プロが保管していたということです。表面板の焼けはまるで数年程度の状態。実際、私が2009年にモーリスに作ってもらった楽器より色が白いです。
河村さんから楽器を預かって、まずきれいに掃除して、各部をチェック、そして一番気になる表面板とブリッジの写真撮影をしておきました。バス・バーの状態は問題なし、表面板のたわみ、割れもなし、ブリッジの接着状態もオーケーです。ネックのそりもなし、バス・ライダーの接着状態も問題なし、ペグの状態も極めて快調です。パーチメントの端が5ミリくらいはがれていましたが、これは問題と言えるものではないでしょう。
張ってあった古い弦のピッチを392まで上げてみました。いやぁ参りました。想像していたのとは全く異なり、すばらしい音色、バランスです。1973年と言えば私が初めてバロック・リュートを買ったのが1974年です。その楽器とは雲泥の差です。1年前にこのレベルの楽器が存在していたとは今更ながらいささかショックでした。
実はその頃ヤコブのルネサンス・リュートをほんの少しだけ触ったことがありましたが、某製作家の工房に修理で入っていたときのもので状態があまりよくありませんでした。おまけにヤコブは「膠の替わりにボンドでぺたぺた貼り付けている」「弟子を雇って(モーリスのことですね)雑に大量生産している」「だからよく故障する」ということをある人から聞いていたので、大して関心も持たずに今に至っています。これは迂闊でしたねぇ。
今は弦を11コースまで新しいのに交換、12、13コースは外して、392で調弦してあります。弦の張力は48キロ、かなりローテンションです。もう1週間くらい経ちますが今のところは問題は出ていません。とはいえ、44年経過した老体ではありますので、このまま一カ月くらいは様子を見る予定です。
しばらくは11コースで運用して、何カ月か経過して問題がなければ、ローテンション(私が運用している楽器の90%以下)の弦を415まで上げてみようと考えています。弦を選定して計算してみましたが、53キロくらいです。製作時の弦の総張力が52キロくらいなので行けるのではないでしょうか。
そのときに、九州の松尾さんに頼んで、表面板のクリーニング、パーチメントの張替え、ブリッジの弦穴拡張、エンドピンの装着などをお願いしようかと考えています。
そのヤコブの楽器が「突如」伊勢市在住のギター製作家である河村和行さんの工房から出てきました。まぁ、実際には突如というわけではなく、河村さんが丁寧に保管していたのを私が知らなかったということですけど。全く別の用で河村さんの工房にお邪魔したのですが、「実はバロック・リュートが一本あります」とおっしゃるので、拝見させていただくと、何ととてもきれいなヤコブ・ファン・デ・ゲーストの楽器が出てきたのです。

楽器の由来を伺うと、今村泰典氏に偶然大阪で会ったのをきっかけに楽器を譲ってもらったそうです。楽器の製作年は1973年、河村さんの手に割ったのが1976年です。ヤコブがまだひとりで作っていた時代の作品です。
見せていただいた楽器は、ある意味奇跡的というくらいの保存状態の良さです。しかも今村氏がたっぷりと3年間弾きこんでいます。プロの手で弾きこみ、プロが保管していたということです。表面板の焼けはまるで数年程度の状態。実際、私が2009年にモーリスに作ってもらった楽器より色が白いです。
河村さんから楽器を預かって、まずきれいに掃除して、各部をチェック、そして一番気になる表面板とブリッジの写真撮影をしておきました。バス・バーの状態は問題なし、表面板のたわみ、割れもなし、ブリッジの接着状態もオーケーです。ネックのそりもなし、バス・ライダーの接着状態も問題なし、ペグの状態も極めて快調です。パーチメントの端が5ミリくらいはがれていましたが、これは問題と言えるものではないでしょう。
張ってあった古い弦のピッチを392まで上げてみました。いやぁ参りました。想像していたのとは全く異なり、すばらしい音色、バランスです。1973年と言えば私が初めてバロック・リュートを買ったのが1974年です。その楽器とは雲泥の差です。1年前にこのレベルの楽器が存在していたとは今更ながらいささかショックでした。
実はその頃ヤコブのルネサンス・リュートをほんの少しだけ触ったことがありましたが、某製作家の工房に修理で入っていたときのもので状態があまりよくありませんでした。おまけにヤコブは「膠の替わりにボンドでぺたぺた貼り付けている」「弟子を雇って(モーリスのことですね)雑に大量生産している」「だからよく故障する」ということをある人から聞いていたので、大して関心も持たずに今に至っています。これは迂闊でしたねぇ。
今は弦を11コースまで新しいのに交換、12、13コースは外して、392で調弦してあります。弦の張力は48キロ、かなりローテンションです。もう1週間くらい経ちますが今のところは問題は出ていません。とはいえ、44年経過した老体ではありますので、このまま一カ月くらいは様子を見る予定です。
しばらくは11コースで運用して、何カ月か経過して問題がなければ、ローテンション(私が運用している楽器の90%以下)の弦を415まで上げてみようと考えています。弦を選定して計算してみましたが、53キロくらいです。製作時の弦の総張力が52キロくらいなので行けるのではないでしょうか。
そのときに、九州の松尾さんに頼んで、表面板のクリーニング、パーチメントの張替え、ブリッジの弦穴拡張、エンドピンの装着などをお願いしようかと考えています。