(日炭高松炭鉱。西日本新聞フォトライブラリーより引用。)
「腰べん」とは工員を指す侮蔑用語だった。腰に弁当をぶらさげて出勤したからである。
20年少し前、私は名古屋から豊橋まで通勤しなくてはならなくなった。遠いので閉口した。息子や娘がまだ中学高校の時分だったが、転校は避けたかった。
親友の父親にそのことをコボした。そうしたら父君は「君さえ頑張れば、すべて丸くおさまる」と言った。私は、なるほどと思った。依頼、文句も言わず始発のバスで通勤を始めた。冬はまだ暗いうちに家を出なくてはならなかった。
始発のバスに乗って仰天した。そのバスはすでに超満員なのだった。同乗者は「腰べん」ばかり。彼らはこんな時間からもう出勤しているのだ。自分の甘さを思い知った。
こうした生活が2年間続いた。「腰べん」をあなどってはならないと、つくづく思った2年間だった。
※今日の俳句(秋)
台風禍自転車の人出できたる