院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

「ネット依存」と「本依存」

2013-08-04 04:54:37 | 読書
 このごろ「ネット依存」がよく話題になる。スマホが普及してから、中高生で一層問題にされるようになった。「ネット依存」のきちんとした定義はないが、要するに一日に何時間もネットと繋がっていないと気が済まない状態を言うらしい。

 「ネット依存」の良くない点は、夜遅くまでやっていて寝不足になるとか、まぁ今のところその程度である。

 電車やバスの中で、ずっとスマホをいじっている人がいるけれども、彼らは「ネット依存」なのだろうか?

 寝不足になるほどネットをやり、電車やバスの中でもネットをやり、歩きながらでもネットをやる。このような行為のどこがいけないのだろうか?

 昔は、本に夢中になってついつい寝不足になるとか、電車やバスの中で本を読むとか、歩きながら本を読むということがあった。(二宮金次郎が、その典型である。)

 「ネット依存」の伝で行けば、これは「本依存」ということになってしまう。「ネット依存」が問題となって、「本依存」が問題にならないのは、どこかバランスを欠くように思うのだが、どうか?

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4 コメント

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Unknown (かわひらこ)
2013-08-04 11:01:03
いつもながら、中里先生らしい、人の盲点を衝くご指摘でした。
ネット依存の弊害は生活リズムの乱れだけだと理解してよろしいですか。どこかに病的依存となる閾値のようなものはないのでしょうか。
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社会規範はすぐ変わる (管理人)
2013-08-04 16:44:29
 かわひらこさん、こんにちは。
 私たちが小学校のころ漫画は「悪書」でしたよね。ところが現在では並みの文学作品をしのぐような漫画がたくさんあります。悪書かどうかは時代の規範に左右されるようです。
 私には「ネット依存」をまるで「アルコール依存」のように「病気」の範疇に入れてほしくないという気持ちがあります。「病気」の定義は生物学的な問題に限るべきで、社会規範との比較によって「病気」を造ってはならないと思います。この点でマスコミは無神経です。
 「ネット依存」がいけないなら、二宮金次郎だっていけないだろうとこのコラムで言ったのは、社会規範なぞ時代によってすぐに変わってしまうよと指摘したかったからです。それに対して感染症のように生物学的な根拠がある病気なら、規範が変わっても存在し続けます。
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追伸 (かわひらこ)
2013-08-05 21:19:32
先生は、昨年出された高著、『統合失調症治療の再検討』で、狩猟民では尋常な挙措行態が、農耕民の見地からは統合失調症とみなされることになるという趣旨のご見解を示されていたと存じます。この度のご意見も、それと通底するように思われますが、いかがでしょうか。
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文化依存性 (管理人)
2013-08-05 23:26:38
 そそ、そうなんです。「文化依存性」について述べたかったんです。人類は良きにつけ悪しきにつけ文化に規定されています。美人とブスの区分けはもちろん、「病気」ですら文化に規定されることがあります。この辺のスタンスはまさに『統合失調症・・』にも通底しています。そこまで深くご理解いただけると、著者冥利につきるというものです。
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