院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

俳句第二芸術論

2012-09-23 00:07:35 | 俳句
 終戦直後の1946年、桑原武夫の「第二芸術--現代俳句について--」という論文が岩波書店の雑誌「世界」に掲載された。

 桑原は大家と素人の俳句を混ぜて15句を並べ、読者がどれが大家の作でどれが素人の作か分からない事実を指摘した。だから、俳句は人生を語りえない、老人たちが党派を組んで、内輪ぼめをしているだけだと論じ、公教育から俳句を排除せよと主張した。

 俳句界が自分のありかたを模索していた時期だけに、桑原の論は俳句界に激震を引き起こした。多くの俳人が強烈に桑原論に反対した。

 虚子はどうしたかというと、「俳句もとうとう芸術になりましたか」と意に介さなかった。

 桑原の主張にも一理あるのだが、桑原は決定的な誤りを犯している。それは、15句の俳句の識別ができなかったという母集団が、実は東北大学の教員と学生だったという点である。

 母集団がこれでは、俳句の識別ができなくて当然である。ズブの素人には俳句の出来不出来が分からないのは当たり前で、素人が前衛書家の書と幼児の書を区別できないのと同じことである。

 少なくとも俳句を始めて25年の私には、例示された15句が大家の作か素人の句か区別ができる。桑原の立論は、スタートの部分ですでにつまづいているのである。(だからと言って、桑原の主張をまったく無価値だと言っているわけではない。)

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