『鶏肉、魚、そして蟹』:ホセ=ルイス=ロペス=リナレス監督
2007年ベルリン国際映画祭、トライベッカ映画祭正式作品
87分
新宿バルト9にて公開中
:空きっ腹を抱えてバルト9の8番シアターに座り込むと隣から、
意地の強そうな、それでいてふんわりしたスカートをはいた
OLぽい女性の抱えたカップから凶悪なくらいポップコーンの
味のついた油がにおってきた。食べ物の映画を観るまえから
食べ物でトドメ刺されそうだった。
:『鶏肉、魚、そして蟹』は、
世界最高峰の料理コンクール”ボキューズ・ドール”に挑む
スペインのシェフたちを撮ったドキュメンタリーだ。
彼らの苦労のほかにも、他国のシェフに取材した時の話や、
材料の出所云々含め、いろんなカットがうまくまとめられているのに加えて
音楽のセンスが、会話でまったりした身体をほどよくほぐす程度に
明るくて観やすいつくりとなっている。
鶏の産地で、巨大な鶏の像を前に、
「あの像のおかげで町は発展したのよ。
トラックや車も止まって写真を撮るの」
みたいなコトを語るおばあさんの言葉に乗せながら、
おもいっきり前を通り過ぎてゆくトラックのシーンとか、
ちょっとしたひねりもいいが、やはり目を惹くのはコンクール当日の映像だ。
主役のシェフ、ヘスス=アルマグロ氏は当然緊張している。
その緊張がしかたのないものだということは映画を観るうちに
わかる。けれど、料理の手順にかかるショット、わざとコマ送りの
ように一時停止しながら進んでゆくのだが、アップにされる
おでこの後退した彼の顔を、観ていても緊張しない。
あ、たのしいんだな、それだけが押し付けがましくなく伝わってくる。
あとこのヘススというひとは、別に役者ではないのだけれど、
料理について他のシェフの意見を聞いているときの
笑っている形をしながらもぎゅっと結んだ口元が、どんなときもあんまり
動かない眼球が意外とすなおにモノを語ってくれるところが面白い。
:さて肝心の料理だが悲しきかな、美食学に縁のない書き手には
作ってる途中の方がおいしそうに見えてしまった。うーむ。
けどヘススが母親といっしょに食べていた直フライパンのパエリアに
胃袋を射抜かれ、友人と夜中の新宿をさまよったけれど、
スペイン料理が都合よくみつかるはずもなく。
結局、サフランの黄色にだだをこねたくなる夜を迎えた。
2007年ベルリン国際映画祭、トライベッカ映画祭正式作品
87分
新宿バルト9にて公開中
:空きっ腹を抱えてバルト9の8番シアターに座り込むと隣から、
意地の強そうな、それでいてふんわりしたスカートをはいた
OLぽい女性の抱えたカップから凶悪なくらいポップコーンの
味のついた油がにおってきた。食べ物の映画を観るまえから
食べ物でトドメ刺されそうだった。
:『鶏肉、魚、そして蟹』は、
世界最高峰の料理コンクール”ボキューズ・ドール”に挑む
スペインのシェフたちを撮ったドキュメンタリーだ。
彼らの苦労のほかにも、他国のシェフに取材した時の話や、
材料の出所云々含め、いろんなカットがうまくまとめられているのに加えて
音楽のセンスが、会話でまったりした身体をほどよくほぐす程度に
明るくて観やすいつくりとなっている。
鶏の産地で、巨大な鶏の像を前に、
「あの像のおかげで町は発展したのよ。
トラックや車も止まって写真を撮るの」
みたいなコトを語るおばあさんの言葉に乗せながら、
おもいっきり前を通り過ぎてゆくトラックのシーンとか、
ちょっとしたひねりもいいが、やはり目を惹くのはコンクール当日の映像だ。
主役のシェフ、ヘスス=アルマグロ氏は当然緊張している。
その緊張がしかたのないものだということは映画を観るうちに
わかる。けれど、料理の手順にかかるショット、わざとコマ送りの
ように一時停止しながら進んでゆくのだが、アップにされる
おでこの後退した彼の顔を、観ていても緊張しない。
あ、たのしいんだな、それだけが押し付けがましくなく伝わってくる。
あとこのヘススというひとは、別に役者ではないのだけれど、
料理について他のシェフの意見を聞いているときの
笑っている形をしながらもぎゅっと結んだ口元が、どんなときもあんまり
動かない眼球が意外とすなおにモノを語ってくれるところが面白い。
:さて肝心の料理だが悲しきかな、美食学に縁のない書き手には
作ってる途中の方がおいしそうに見えてしまった。うーむ。
けどヘススが母親といっしょに食べていた直フライパンのパエリアに
胃袋を射抜かれ、友人と夜中の新宿をさまよったけれど、
スペイン料理が都合よくみつかるはずもなく。
結局、サフランの黄色にだだをこねたくなる夜を迎えた。