時々CMに差し挟まれていたので番組名だけは知っていたものの、なかなかチャンネルに組み入れられないので機会を失っていた『バッド・チャド・カスタム』をようやく視聴した。オーナーのチャドが率いる「グリーン・ゴブリン・ガレージ」に密着するアメリカ発の車番組だ。レストアや改造を手掛ける「ガレージ」密着型の番組は『ファスト・アンド・ラウド』を始め、そのスピンオフ『ミスフィット・ガレージ』、『シフティング・ギア』、『ディーゼル・ブラザーズ』、『カスタム・マスター』など比較的枚挙にいとまがない。実際に営業しているガレージに密着して、本題の車の他にも従業員とのやりとりや経営の工夫などしょうばいの舞台裏も交える点が、ディーラーやエンジニアや批評家などの専門家の解説により車自体を中心に取り上げるイギリスの番組とは違っている。
『バッド・チャド・カスタム』が得意とするのは他の番組たちが鼻もひっかけないぼろぼろの車から艶やかなオリジナルマシンを生み出すことだ。年代こそアンティークな1935年生まれながらタイヤはなく内装は剝がれ、野ざらしにされて錆が七割を侵食して辛うじて車の形を維持しているフレームを安く買い取り、短期間で改造してお披露目の場で高く売る。ピットブルのような容貌に首輪のような刺青を入れ「復元より分解」と言ってのけるチャドの仕事は荒っぽいが、出来上がりは繊細な曲線を描き芝生に生えるロイヤルブルーの瀟洒な完成品だ。設備がなく太いパイプを曲げるために床へ竹刀のように振り下ろしたり、溶接ではハンダの代わりに金属のハンガーを溶かして埋めるなどの際どい作業には多少不安を覚えるものの、客は概ね満足して万単位のドルを彼の車に払う。
番組名のやんちゃぶりとは反比例してガレージを構成するメンバーはチャドを筆頭に真面目なのでメンバー同士の諍いはなく安心して見ていられる。人間関係自体はチャドの前の奥さんとの息子のコルトンと現在の「俺の女」兼優秀なマネージャーの美女ジョリーンという複雑な存在がおり、日本ならば揉め事のひとつも勃発しそうな風情だか特にそういうことは無い。マネージャーの立場からコルトンをジョリーンは評価し、職場では上司としてコルトンは父親のチャドの指示に忠実だ。基本的にチャドは表情の変化に乏しいがコルトンが満足の行く仕事をこなしていると声が少しだけ弾むところは微笑ましい。
他の番組を見てからこの番組に来ると規模の小ささに驚かされる。特に改造を得意とし、ガレージ内で内装も塗装も手掛け、オーナーが車のデザインを手掛けてオリジナルの仕様にするなど、共通点の多い『カスタム・マスター』とは事業規模に極端な差が開いており見比べると面白い。ふと気づいたが経営が順調で顧客が確実に大金持ちと言う事情のせいか、『カスタム・マスター』はカネの話が一切出ない。かなり珍しい例ではないかと思う。
そうした状況もどこ吹く風で「科学のことはよく知らない。だから力づく」と目の前の仕事を頭に描いた図案から完成させるチャドの物作りは手段からして独創的で、それでいて突飛や奇抜から無縁なストイックさへ不思議に惹きつけられる。ダーツの代わりに斧を投擲する的当てを息子と二人で楽しむ笑顔が、何とも言えずに客も視聴者も引き寄せてゆく。
『バッド・チャド・カスタム』が得意とするのは他の番組たちが鼻もひっかけないぼろぼろの車から艶やかなオリジナルマシンを生み出すことだ。年代こそアンティークな1935年生まれながらタイヤはなく内装は剝がれ、野ざらしにされて錆が七割を侵食して辛うじて車の形を維持しているフレームを安く買い取り、短期間で改造してお披露目の場で高く売る。ピットブルのような容貌に首輪のような刺青を入れ「復元より分解」と言ってのけるチャドの仕事は荒っぽいが、出来上がりは繊細な曲線を描き芝生に生えるロイヤルブルーの瀟洒な完成品だ。設備がなく太いパイプを曲げるために床へ竹刀のように振り下ろしたり、溶接ではハンダの代わりに金属のハンガーを溶かして埋めるなどの際どい作業には多少不安を覚えるものの、客は概ね満足して万単位のドルを彼の車に払う。
番組名のやんちゃぶりとは反比例してガレージを構成するメンバーはチャドを筆頭に真面目なのでメンバー同士の諍いはなく安心して見ていられる。人間関係自体はチャドの前の奥さんとの息子のコルトンと現在の「俺の女」兼優秀なマネージャーの美女ジョリーンという複雑な存在がおり、日本ならば揉め事のひとつも勃発しそうな風情だか特にそういうことは無い。マネージャーの立場からコルトンをジョリーンは評価し、職場では上司としてコルトンは父親のチャドの指示に忠実だ。基本的にチャドは表情の変化に乏しいがコルトンが満足の行く仕事をこなしていると声が少しだけ弾むところは微笑ましい。
他の番組を見てからこの番組に来ると規模の小ささに驚かされる。特に改造を得意とし、ガレージ内で内装も塗装も手掛け、オーナーが車のデザインを手掛けてオリジナルの仕様にするなど、共通点の多い『カスタム・マスター』とは事業規模に極端な差が開いており見比べると面白い。ふと気づいたが経営が順調で顧客が確実に大金持ちと言う事情のせいか、『カスタム・マスター』はカネの話が一切出ない。かなり珍しい例ではないかと思う。
そうした状況もどこ吹く風で「科学のことはよく知らない。だから力づく」と目の前の仕事を頭に描いた図案から完成させるチャドの物作りは手段からして独創的で、それでいて突飛や奇抜から無縁なストイックさへ不思議に惹きつけられる。ダーツの代わりに斧を投擲する的当てを息子と二人で楽しむ笑顔が、何とも言えずに客も視聴者も引き寄せてゆく。